産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は15、16両日、合同世論調査を実施した。金融庁金融審議会が報告書で、公的年金だけでは老後資金が2千万円不足すると試算したことを受け、年金制度について「不信感が増した」との回答が51・0%に上り、「変わらない」の44・6%を上回った。
「これまで老後は年金だけで暮らしていけると思っていたか」との質問では「思っていなかった」が84・2%に達し、「思っていた」の13・9%を大きく上回った。政府が「100年安心」の年金制度を主張する中、公的年金がもともと老後資金の全てを賄う設計とはなっていないことに対する国民の冷静な受け止めがうかがえた。
麻生太郎金融担当相が報告書を受理しない対応については「適切でない」との回答が72・4%を占めた。自民党支持層に限っても68・7%が「適切でない」と回答した。
安倍晋三内閣の支持率は47・3%で、前回調査(5月11、12両日実施)より3・4ポイント減り、不支持率は同1・6ポイント増の36・5%だった。自民党の支持率も前回比5・1ポイント減の35・9%となり、「2千万円問題」が影響したとみられる。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は17日に国会内で開かれた政府・与党協議会で、報告書について「冷静に丁寧に説明し、不安をあおることのないように進めたい」と述べた。自民党が17日に開いた全国幹事長会議の出席者からも「大事な時期に不安要素が出た。極力こういうことは避けなければならない」との批判が出た。
一方、野党はこの問題を政府の失策とし、夏の参院選での争点化をもくろむが、政党支持率は伸び悩んでいる。立憲民主は前回比0・6ポイント減の6・8%、国民民主も同0・6ポイント減の0・5%にとどまった。国民が冷静に年金制度をとらえている中、批判だけで支持を得るのは難しいようだ。
立憲民主は「高齢者の不安に対応できる医療や介護の体制を早期に作り上げることが対案だ」(枝野幸男代表)としており、近く発表する参院選公約での具体策が注目される。