立憲民主党が24日に発表した夏の参院選の公約で、「安定的な皇位継承に向けて、『女性・女系皇族への皇位継承資格拡大』や『女性宮家の創設』などの論点をとりまとめた」と明記した。ただ、皇室という重要テーマであるにも関わらず、その意見集約は「拙速」との印象を残した。
皇室に関する公約の土台は、11日に発表された「安定的な皇位継承を確保するための論点整理」だ。立憲民主党の「安定的な皇位継承を考える会」(海江田万里会長)が取りまとめた。 実はこの論点整理は発表直前まで、男系維持派が期待する旧皇族の皇籍復帰について「採用は困難である」、女系天皇誕生のきっかけになりかねない女性宮家創設は「目指すべきである」と明記していた。
しかし、発表当日の党常任幹事会で断定的な表現に物言いがつき、皇籍復帰は「採用には困難な問題がある」、女性宮家は「のぞましいと考える」と修正を余儀なくされた。公約化を急ぐあまり、党内議論が不十分だったことが露呈した。
とはいえ、ドタバタ劇の責任は海江田氏らだけにあるわけではない。「考える会」の会合には毎回、数人程度しか出席していなかったからだ。根っこには同党所属議員の皇室への関心の低さがある。
枝野幸男代表は24日の記者会見で、女系に肯定的な記述について「論点整理はしたが、結論は出していない」と述べ、確定的な見解ではないと強調した。真意は不明だが、参院選を前に男系支持層離れを避けたい思いは伝わってくる。
他の政党はどうか。国民民主党は13日に発表した参院選の公約で「皇籍を離脱せず女性宮家を創設できるよう皇室典範を改正する」と明記した。ただ、そのわずか2日前に男系維持に主眼を置いた皇室典範改正案を発表していただけに、有権者が混乱する可能性は否定できない。
共産党は女性・女系天皇に賛成の立場だが、皇室典範改正を主導する考えはないとして、公約では触れなかった。
自民党も「皇位継承は参院選の争点にそぐわない」(政調関係者)として、公約化は見送った。自民党や日本維新の会は、皇位継承のあり方に関する意見集約を急がない考えだ。
安倍晋三首相は21日、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が主宰するインターネット番組「言論テレビ」に出演。「例外なく男系の継承が維持されてきた。長い歴史を十分に踏まえなければいけない」と述べ、男系の皇位継承が続いた伝統を重視する考えを示した。同時に、天皇陛下が即位を宣言される「即位礼正殿の儀」を10月に控えるため、具体的な検討はそれ以降に着手する意向を明らかにした。
一方、維新も地に足のついた議論が必要だとの立場だ。維新の馬場伸幸幹事長は12日の記者会見で「他の野党が急な感じで皇位継承について見解を発表しているが、選挙絡みだと思う。維新は選挙と切り離して考えていきたい」と語った。(内藤慎二)