
9月27日、バルト海のデンマーク沖で、ノルトストリームから漏れて海上に現れた天然ガスの気泡(ロイター)
北大西洋条約機構(NATO)が海底監視の強化に乗り出すのは、ウクライナ侵略を続けるロシアの脅威が多方面に及ぶ中、重要インフラ(社会基盤)が攻撃対象となるリスクが高まっているためだ。今秋以降、欧州各地のインフラで不審な事案が相次いでおり、各国は焦りを募らせている。(ベルリン 池田慶太)

11月30日、ベルリンで開かれた会議で重要インフラ保護などを議論するショルツ独首相(右)とノルウェーのストーレ首相=池田慶太撮影
NATO主導で海底を監視する構想はドイツとノルウェーが提案した。ショルツ独首相とノルウェーのストーレ首相は11月30日にベルリンで会談した際、海底インフラ防護の必要性を確認。両首脳はその夜、会議出席のためベルリンを訪れたイェンス・ストルテンベルグNATO事務総長と会談し、監視センターの設置を直談判して構想具体化の流れを固めた。
ショルツ氏は同日の講演で、ロシア・ドイツ間のガスパイプライン「ノルトストリーム」に対する破壊工作などに触れ、「我々の重要インフラがいかに脆弱(ぜいじゃく)かを示している」と指摘。ストーレ氏も同じ講演で、海底のパイプラインや通信ケーブルを「現代社会の血液循環」と表現し、「保護することは私たちの社会のカギとなる」と訴えた。
欧州最大級のエネルギー消費国であるドイツはウクライナ侵略をきっかけに露産ガスからの脱却を進め、現在はガス輸入の4割超をノルウェー産に頼っている。一方、世界有数のガス・石油生産国のノルウェーは、各国の「脱露」の結果、ロシアを抜いて欧州最大のエネルギー供給国となった。
北海のノルウェー沖には石油・ガスの掘削施設などが90か所あり、欧州各地と総延長9000キロ・メートルのパイプラインでつながっている。こうしたインフラが破壊されれば、自国だけでなく欧州全体がマヒしかねないとの危機感が強い。
危機感は欧州各国も共有する。英スコットランド沖で海底ケーブルが切断されるなど欧州各地の重要インフラで破壊工作の「疑い事案」が続いているためだ。欧州の不安定化を狙い、ロシアが関与した可能性も排除できない。欧州連合(EU)は衛星技術を使った重要インフラ監視の検討を開始。英政府は王室専用船の建造を中止し、財源を海底監視が可能な多目的船の購入に転用する方針を決めた。