プーチン大統領、軍高官と協議 ウクライナでは電力復旧
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は16日、「特別軍事作戦」の本部を訪れ、ロシア軍の次の動きについて協議した。国営テレビが映像を放送した。
プーチン氏は司令官らに、「各作戦方面の指揮官の意見を聞きながら、当面の行動と中期的な行動について提案が聞きたい」と述べた。
映像では、プーチン氏の隣にセルゲイ・ショイグ国防相と ワレリー・ゲラシモフ参謀長が座っていた。
ゲラシモフ参謀長については、罷免されたとのうわさもあったが、今回の映像によって打ち消された。ゲラシモフ氏の慎重姿勢は、タカ派コメンテーターらの批判対象になってきた。
国営メディアが発表したこの日の写真には、セルゲイ・スロヴィキン空軍大将の姿もあった。スロヴィキン将軍は10月にウクライナ侵攻の総司令官に任命された。
ウクライナ軍の反攻はここ数カ月、ロシアが唯一占領した州都ヘルソンを奪還するなど、躍進を続けている。秋にウクライナ東部ハルキウやイジュームなどからロシア軍が撤退したことと併せて、軍高官らは政府寄りの主戦派コメンテーターから批判され続けている。
■ウクライナ側の予測とベラルーシ
対するウクライナ軍の総司令官を務めるヴァレリー・ザルジニー陸軍大将は先に、ロシアが来年の早い時期に新たな大規模攻撃を仕掛けてくるとみていると発表。ロシアは約20万人の兵士を訓練中だと警告した。
ザルジニー大将は、「ロシアが再び首都キーウを攻めるのは間違いない」として、「私は手勢の戦闘部隊の数も、年末までにいくつの戦闘部隊を用意しなくてはならないかも、承知している。そして何より、現状がどれだけ大変でも、その戦闘部隊に今はいっさい手を付けてはならないことも、承知している」と述べた。
また、攻撃は「キーウの方向」から始まる可能性もあり、その場合はベラルーシが出発点になることもあり得るとの見方を示している。
2月の侵攻開始時、ロシア軍はベラルーシ国境を越えてキーウへと進軍した。
ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、自軍の参戦を繰り返し否定しているが、ベラルーシでは現在、ロシア国防省が「集中戦闘訓練」呼ぶものにロシア兵数千人が参加している。
プーチン大統領は19日にも、ベラルーシの首都ミンスクを訪れ、ルカシェンコ氏と会談する予定。
■アメリカの予測
一方、ロシア軍がキーウを攻撃できるかについては疑問の声もある。米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官は、アメリカの情報当局は「キーウに対する、差し迫った動きがあるという兆候を目にしていない」と述べた。
米国防総省幹部もロイター通信の取材に対し、ロシア軍は備蓄兵器を急速に消費しているため、製造から何十年もたち成功率の低い砲弾を使わざるを得なくなっていると話した。
また、「ロシアによる大砲やロケット弾の使用頻度」から判断すると、2023年の早い時点で信頼できる砲弾を使い果たす可能性があるという。
■ウクライナ各地で電力復旧
こうした中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は17日、ロシア軍のインフラ攻撃が原因の停電から復旧し、約600万人が電気のある生活に戻ったと発表した。
キーウのヴィタリ・クリチェンコ市長も、攻撃によって止まっていた地下鉄と水道が復旧したと述べた。
このほか、市内全体が停電に見舞われていた東部ハルキウでも電力が復旧した。
ロシアは10月10日以降、1000発以上のミサイルとイラン製ドローンを使い、ウクライナの電力インフラへの攻撃を繰り返している。フランスのエマニュエル・マクロン大統領をはじめとする各国首脳は、こうした攻撃が戦争犯罪にあたると非難している。
イギリス国防省の17日付戦況分析によると、「ここ数日で、ウクライナの重要な全国的なインフラに対するロシアの長距離攻撃は増加している」。攻撃のほとんどは「空や海から発射された巡航ミサイルによるものだが、ロシアのクラスノダル地方から出発するイラン提供の無人航空機(UAV)も、ほぼ確実に含まれている」という。かつてはUAVのほとんどはクリミア発だったため、離陸拠点の変更は、ロシアがクリミアの安全性を懸念していることの表れではないかと、国防省はみている。
(英語記事 Putin meets generals as missiles pound Ukraine)
(c) BBC News