世界初の空中消耗戦に挑むウクライナ、戦闘機提供は勝利の助けにはならない

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NATOが西側製戦車の提供に踏み切ったため「次は戦闘機だ」という声が増えているが、米空軍のブレマー大佐は「世界初のミサイルやドローンを使用した空中消耗戦に挑んいるウクライナにとって防空システムの維持こそが勝利への鍵だ」と主張した。

米国もNATOも戦闘機提供にリソースを割くのではなく、防空システムや地対空ミサイルの生産と供給に集中すべき

米国とドイツがエイブラムスやレオパルト2の提供に踏み切ったため「西側製戦車は提供できない」という不文律は破られた格好で、ウクライナのゼレンスキー大統領やクレバ外相は「次はF-16を提供して欲しい」と主張、NATO加盟国の一部でも「F-16提供に協力する用意がある」と、ロッキード・マーティンも「政府の決定があればグリーンビルでの生産量を増やしてウクライナへの提供をサポートできる」と述べており、西側製戦闘機の提供に期待感が集まっている。

世界初の空中消耗戦に挑むウクライナ、戦闘機提供は勝利の助けにはならない

出典:U.S. Air Force photo by Master Sgt. Tristan McIntire

このような動きについて米空軍のマクシミリアン・ブレマー大佐は「米国や同盟国が提供する兵器は勝利への戦略に沿ったものでなければならず、ウクライナに欧米流の航空優勢を追求させるのは勝利の助けにはならない」と主張し、この戦争で学んだ教訓に基づき「現代の航空戦は高価な固定翼機よりも移動可能で生存性の高い地上型防空システムの方が有利だ。ウクライナは防衛上の優位性をさらに強化する方が勝利の可能性を手繰り寄せることに繋がり、戦闘機を使用して制空権を確保するという考えは大きな間違いだ」と訴えた。

ブレマー大佐はウクライナ上空で繰り広げられている航空優勢を懸けた戦いについて「ミサイルやドローンを使用した世界初の空中消耗戦」と表現し、ロシア軍は航空優勢を確保するため「敵防空システムを直接破壊するのではなく、インフラをミサイルや無人機で攻撃することで地対空ミサイルの枯渇を狙っており非常に狡猾な策略だ。国民を暗くて寒い生活から救うため地対空ミサイルを消耗し続けるか、長期的な成功のため高い代償を支払うかの選択をウクライナに突き付けている」と述べているのが興味深い。

世界初の空中消耗戦に挑むウクライナ、戦闘機提供は勝利の助けにはならない

出典:Командування Повітряних Сил ЗСУ

従来の航空優勢は戦闘機による制空権確保と、敵防空網制圧ミッションによるレーダーや地対空システムの破壊で達成されるが、高度で移動可能な防空システムの生存性は予想以上に高かったためロシア空軍はウクライナ上空全域での航空優勢確保に失敗、ウクライナ空軍も防空システムで守れた地域上空を飛ぶことが出来てもロシア軍支配空域に侵入するのは不可能に近く、航空優勢を確保するためのアプローチは「敵の地対空ミサイルを枯渇させる」という前例のないものになっている。

ウクライナ軍がS-300で使用する地対空ミサイルの補充は困難なので在庫は急速に減少しており、NATOが提供する西側製の防空システムに移行している途中だが、ブレマー大佐は「ロシアによる航空優勢確保への試みが成功するかどうかは西側の供給量を上回るスピードでウクライナ軍の地対空ミサイルを消耗させられるかどうかに掛っているため、残念ながらウクライナは防空システムの使用をより選択的に使用する必要がある」と言及。

世界初の空中消耗戦に挑むウクライナ、戦闘機提供は勝利の助けにはならない

出典:Photo Credit: U.S. Army PAC-2ランチャー

つまり欧米は「敵有人機による航空優勢」を阻止するための防空システムを整備してきたため、ミサイルやドローンを使用した空中消耗戦に対応できるほど防空システムも地対空ミサイルも保有しておらず、産業界も生産能力もこれに応じた規模しかなく、恐らくパトリオット、SAMP/T、NASAMS、IRIS-TSL、Aspide、HAWKといった防空システムを提供しても「迎撃できる目標は限られる」という意味だ。

以上のような問題からブレマー大佐は「もっとウクライナはミサイルやドローンによる被害を受け入れる必要がある。ロシア軍の攻撃は一般市民を標的にしているため『これを守りたい』と考えるのは当然だが、ロシア軍が発射するミサイルやドローンを全て迎撃するのは技術的に不可能で持続可能でもない。西側が提供する防空システムや地対空ミサイルで持続可能な接近拒否を維持できなければ空の攻撃から無防備な状態になる」と警告している。

世界初の空中消耗戦に挑むウクライナ、戦闘機提供は勝利の助けにはならない

出典:Raytheon NASAMS

要するにブレマー大佐が「F-16を提供してもウクライナ勝利の助けにはならない」と主張するのは、量的優位が明確なロシア空軍の戦闘機を駆逐し、S-300やS-400といった生存性の高い防空システムを制圧するための本格的な敵防空網制圧能力がないウクライナ空軍にF-16を供給しても効果は限定的なので「米国もNATOも戦闘機提供にリソースを割くのではなく、防空システムや地対空ミサイルの生産と供給に集中すべきだ」という意味だ。

将来的にF-16など西側製戦闘機の提供が実現するかもしれないが、現時点で優先すべきは戦闘機ではなく「接近拒否を維持する防空システムや地対空ミサイルの提供」で、これが崩壊すればウクライナの敗戦は濃厚になる。

世界初の空中消耗戦に挑むウクライナ、戦闘機提供は勝利の助けにはならない

出典:U.S. Air National Guard photo by Staff Sgt. Sarah M. McClanahan アップグレードを終えたF-16のレーダー

因みに米空軍の関係者はF-16C/DのレーダーをAN/APG-83に換装した際「AN/APG-68では1度に2つ以上の移動目標を追尾するのが不可能で敵巡航ミサイルの検出能力も0に等しかったかった」と述べており、恐らく旧型のF-16を提供してもミサイルやドローンの迎撃に役に立たない可能性が高く、AN/APG-83を搭載したF-16も米空軍、韓国空軍、台湾空軍しか保有していない上「機密上の問題」もあるのでウクライナ提供は難しいだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Matthew Lotz

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