フジテレビ(C)日刊ゲンダイ
ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏(故人)による性加害疑惑で、これまで同事務所と関わってきたテレビ局の上層部がこの問題について重い口を開き始めている。
ジャニー喜多川氏の性加害問題…30年以上告発してきた元Jr.が推測した衝撃の被害者数
5月25日には、テレビ東京の石川一郎社長が定例会見で「タレントに罪や問題などがあるわけではない」「さまざまな形で活躍していただきたいと考えております」と発言。
翌26日、フジテレビの大多亮専務も定例会見で「所属タレントの方々に問題があったわけでございませんので、番組について変えたり、それによって何か変更する予定はない」と説明し、変わらずジャニーズタレントを起用し続ける意向を示した。
これに対しネットでは、
《タレントに罪がないのはその通りですが、不適切な行為をした会社に社会的責任を何ら負わせることなく取引関係を続けるということは、性加害を容認すると言ってるに等しいだろう》
《これ一般企業で考えるとどれだけ常軌を逸した状況なのかわかりますよね。組織的に犯罪をしていて、それを隠蔽していた企業に対して、社員に罪はないからと取引を続ける企業がどこにいますか?》
と、その異常さを指摘したコメントが溢れている。
■アメリカでは「見て見ぬふり」も責任を問われる
「確かにタレント本人に罪はありませんが、それは免罪符になりません。性加害は許されないと言いつつも、自分たちの利益は優先したい、人気者に乗っかってコンテンツを作っていきたいというテレビ局の怠慢さが表れた言葉だなという印象です。図らずも今回の問題で切っても切れないジャニーズ事務所との“ズブズブの関係”が露呈しました。このままでは、テレビ局の対応に納得しない視聴者たちが『ジャニタレ出演のテレビは見ない』という動きになっていく可能性もあると思います」(芸能ジャーナリスト)
タレントを通じてジャニーズ事務所に利益をもたらすことが、コンプライアンス的にも問題ではないのかということも今後の論点になりそうだ。
「ジャニーズ事務所は元検事総長の弁護士に指揮を執らせて再発防止チームを設置するとしていますが、加害者当人が故人となっている時点であまり大きな意味はなさそうです。ジャニーズ事務所は一度解体し、所属タレントたちもおのおの実力で生き残るべきだという声もあります。テレビ局もジャニーズ所属のタレントを起用したいのであれば、事務所ではなく個人と契約を結んだり起用していく方法あるでしょう」(同)
アメリカでは、性加害を黙認していた企業や団体なども罰則を受けるのが自然な流れとなっている。実際にペンシルバニア州立大学のアメリカンフットボール部のアシスタントコーチだったジェリー・サンダスキーが、15年以上に渡り、8人の少年を性的虐待した事件が2011年に発覚すると、同大学の学長、副学長、元アスレチックディレクターも、サンダスキーの行為を知っていたにも関わらず、警察当局への通報を意図的に行わなかったとし、大学理事会によって解任されている。
さらに2018年、ミシガン州立大学のスポーツ医だったラリー・ナッサーが、治療と称して未成年を含む女性330人以上を暴行した罪で有罪となった事件では、当時のミシガン州立大学の学長が事件発覚後に辞任。ナッサーが米女子体操五輪チームのスポーツ医を務めていたことから、有罪判決後に米国オリンピック委員会(USOC)のCEOも健康上の問題を理由に辞任した。
国際社会では重大犯罪を薄々とでも知りながら、それに目を瞑ったり、救済に動かなかった人も、その不作為の責任が問われるのが常識。日本はつくづく性加害に優しい国と言えるのかもしれない。テレビ局上層部たちの「タレントに罪はない」という説明を虚しい気持ちで聞いた視聴者も少なくなさそうだ。