ウクライナの「大反撃」開始から1週間
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、長い間準備してきた「大反撃」が始まったことを10日に宣言してから1週間が過ぎたが、ロシアの「防衛線突破」などの軍事的成果はまだ確認されていない。防衛線に精鋭の兵力を投入しているロシアが、ウクライナ軍の攻勢を効果的に食い止めているものとみられる。
ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は16日、英国の「ガーディアン」に「わが軍が南に攻撃するすべての区域で実質的に戦術的勝利を収めている」とし、「彼らは徐々に現在各方面で2キロメートルまで前進した」と述べた。さらに、激しい戦闘の中心地が、アゾフ海に面したドネツク州の主要都市であるマリウポリに向かう道路側に先週変わったとし、ウクライナがロシア軍を徐々に押し出していると主張した。マリャル次官は2日前の14日にテレグラムに載せた文では、ウクライナ軍がバフムト周辺で200~500メートル、ザポリージャ南東方面で300~350メートル前進したとし「わが軍は激しい戦闘に直面し、敵の優越な制空権および砲撃の中でも前進している」と明らかにした。この主張がすべて事実だとしても、ウクライナが最前線で部分的な前進を成し遂げただけで、ロシア軍の防衛線を突破するなどの成果は上げられていないことが分かる。
一方、ロシアの声は自信に満ちている。ウラジーミル・プーチン大統領は13日、ロシアの戦争担当記者団に対し「彼ら(ウクライナ軍)の損失は壊滅的といえる水準に近づいている」とし、「我々の損失はウクライナ軍の損失の10分の1」だと述べた。ニューヨーク・タイムズもプーチン大統領のこの発言を引用し、ロシア空軍と砲兵が前進するウクライナ軍を攻撃し、反転攻勢初期に奪還した南部のいくつかの村が焦土化したと報じた。この過程でウクライナ軍は、西側がこれまで供給したドイツの主力戦車レオパルト2や、米国のブラッドレー装甲車を多数失ったことが確認された。
同紙はまた17日付の報道で、ロシアが「バフムト攻防戦」で示した人命損失を伴う戦闘を避け、十分な訓練を受け装備を備えた精鋭正規兵力を投入し、戦略・戦術に適した戦闘を繰り広げていると評した。この過程で、ロシアが今回の大反撃に備えて設置した防衛線が大きな威力を発揮しているという。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は、9日に公開した報告書で、ロシアが今回の大反撃に対して非常にきめ細かな塹壕、地雷地帯、竜の歯(対戦車障害物)を設置したとし、これは「第2次世界大戦以後、欧州の地で行われた最も広範囲な防衛作業」だと評した。同紙は米国当局者の話として「ロシアの塹壕は堅固に構築されており、ウクライナがこのようなとてつもない挑戦を克服できるかを判断するのはまだ早い」とし、「ロシアの防空網も(ウクライナの)ドローン送信を妨害し撃墜できるほどの威力を依然として保っており、前進に伴い、ロシアの空中作戦にさらに直面することになるだろう」と懸念を示した。読売新聞も17日、「ウクライナ軍によるロシアへの大規模な反転攻勢に対し、ロシア軍は攻撃用ヘリの大量投入や通信妨害といった新しい手法で抵抗している。南部では重層的な防衛線を敷き、ウクライナ軍を阻む狙いだ」と指摘した。
これまで支援してきた主力戦車などの重火器が大反撃初期に消耗される様相が明らかになったことを受け、西側諸国ではウクライナに今後も続けて兵器供与が可能なのかを懸念する声もあがっていると「ポリティコ」が16日付で報じた。BBCの報道によると、西側諸国のある軍高官は「ロシア軍は全般的にきちんと準備された防衛基地で効果的に防衛している」とし、「このような『防衛中心作戦』はウクライナ軍に高い代償を払わせている」と認めた。しかし、このような結果を「全く予想できなかったわけではない」とし、「ウクライナ軍は被害を受けながらも前進しており、全般的には正しい方向に向かっている」と主張した。
チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )