日本の水産物を実質輸入禁止する中国の狙い
原発処理水の海洋放出を巡って、中国が日本の水産物を実質“輸入禁止”していることについて、なぜ規制が強化されたのか?中国の狙いは何なのか?
■【動画で見る】原発処理水の放出に中国が対抗措置 事実上の“輸入禁止” 「環境を重視する国」を内外に“過剰”アピール 習近平国家主席の「振り上げた拳」の行く末は
ジャーナリスト 近藤大介さん
東アジアの国際関係に詳しいジャーナリストの近藤大介さんに聞きました。
■中国が行う日本の水産物の実質“輸入禁止”は“過剰アピール”?
中国は「人民の健康と海洋環境に責任がある」と主張
中国は日本の水産物について、「人民の健康と海洋環境に責任がある」と主張し、もともと行っていた日本からの輸入水産物の一部を抜き取って調べる“サンプル検査”を、7月から“100%検査”に切り替える考えを示しました。
“100%検査”には時間がかかるので、日持ちしない水産物は鮮度を保つことができず、事実上の輸入禁止措置になっているということです。中国は日本にとって最大の輸出国で、去年の水産物の輸出額は871億円にものぼります。このため輸出業者にとって大打撃になることが懸念されています。
中国の“過剰アピール”か
近藤さんは「中国の“過剰アピール”」だという見解を示しています。処理水の件は“環境問題”“国際問題”として国内外へ広く訴える意図だということです。
“過剰アピール”とはどういうことなのでしょうか?
【ジャーナリスト 近藤大介さん】
「中国では習近平首席が、すごくグリーンを大事に、環境問題を大事にする指導者なんだと今盛んにアピールしています。7月18日に中国で『全国生態環境保護大会』を開きまして、そこで習近平主席が“新時代の中国の特色ある社会主義生態文明思想”というのを決議しました。その中に、原発も安全にするという内容が入っています。これで中国という国は非常にグリーンな国なんだと、国内外にアピールしようとしてるところに、日本の原発処理水の問題があったので、ここぞとばかりに『海を汚染する日本、環境を大切にする中国』という対比をアピールしようとしてるんだろうと思います」
“国際問題”というのはどういうことでしょうか?
【ジャーナリスト 近藤大介さん】
「今、中国はアメリカを非常に意識していますが、アメリカはウクライナ戦争に加担する危険な国であると。日本について、中国は「核汚染水」という言い方していますけれど、海に排出する危険な国であると。それに対して中国はグリーンで環境保護をする、人類運命共同体に向かっていく正しい国なんだとアピールしているんですね」