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返礼品としての提供が停止されているイチローズモルト=楽天のふるさと納税専用サイトから
ふるさと納税による寄付額が埼玉県内トップクラスの秩父市が、返礼品の中で最も人気が高く、寄付額の半分を集めるウイスキー「イチローズモルト」の提供を停止している。市は「提供事業者に疑義が生じたから」とするが、返礼品として扱うようになった2015年から提供業者は変わっていない。「今になってなぜ」との疑問がわく。財政事情にも影響しかねない異例の措置に市が踏み切った背景は――。【照山哲史】
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08年に始まったふるさと納税。今は市の一般会計の歳入の2%弱の年間約5億円を集める寄付額があるが、当初は市内の観光文化施設の招待券などを返礼品としており伸び悩んだ。イチローズモルトなどが返礼品に加わる直前では12年度が約130万円、13年度は約216万円、14年度が約127万円に過ぎなかった。
◇寄付の半数がウイスキー希望
しかし、15年10月にイチローズモルトのほか、カメラ、ゴルフクラブ、豚肉の味噌漬けなどに返礼品が切り替わると、寄付が急増。18年度には3億8231万円、19年度も5億2049万円と2年連続で県内トップの寄付額を集める。20年度はトップを北本市に譲ったが、最新の公表データの22年度も県内3番目の5億3190万円。イチローズモルトを返礼品に希望する寄付は半数近い2億5183万円に上っている。
返礼品のリニューアルの効果はてきめんで、19年9月の定例市議会で、久喜邦康市長(当時)が「ふるさと納税アップという方針を掲げ、財政担当職員と一丸となって、さまざまな手法、方策について検討を重ねて頑張った」と振り返り、「実績」をPRしたほどだ。
寄付額急増をけん引したイチローズモルトだが、返礼品の決定をめぐり曲折もあった。市が提供をもちかけた製造元の「ベンチャーウイスキー」社は「できるだけ多くの人に味わってほしい」との方針で、消費者に直売せず、地元では「秩父酒販協同組合」に卸し、組合加盟店を通じた販売に徹してきたからだ。市は同社の方針を受けて組合に相談し、理事長経営の酒販店からの提供が決まった。
ただ、世界的な評価の高まりもあって慢性的な品薄状態のイチローズモルトだ。この酒販店が返礼品だけで毎年1000万円近く利益を上げる「独占」が今春の監査で判明すると、組合内部からは批判の声が上がるようになった。問題は、毎日新聞の報道で表面化した。
◇「独占」、なぜ見通せなかった
返礼品を提供する業者について、市は(1)市内で栽培、製造、加工、販売、サービスなどを行っている(2)自治体の税について滞納がない(3)反社会的団体の構成員でない――などを要件としている。秩父市に限らず、他の自治体も同様の要件で、この酒販店が要件を満たしていないわけではない。
ただ、返礼品募集の手続きなどを定めた要項では、(返礼品の)申し込みがあった分だけ売り上げになり、自社商品をプロモーションできるだけでなく、販路拡大という波及効果が生まれる、と提供業者のメリットを強調している。そうであれば、イチローズモルトの提供がこの酒販店単独となった時点で、市は「独占」状況が生まれることは十分認識していたはずだ。
こうした指摘に市は「イチローズモルトを返礼品として採用した当初は、市としては組合内部でしかるべき手続きで提供業者を決めたという認識だった。品薄が恒常化した今となっては、このままで良いとは考えていない」とし、提供業者側に改善が図られるまで停止を続行する姿勢だ。
関係者によると、組合は理事長の進退問題を含め、運営状況を改善すべく協議を続けているという。ふるさと納税を所管する総務省市町村税課は「返礼品については、地場産品であることや寄付額に対する一定割合以下など細かい規定があるが、調達先の基準は特に定めていない。現状は各自治体の判断による」としている。
◇イチローズモルト
秩父市の「ベンチャーウイスキー」=肥土(あくと)伊知郎社長=が製造、2005年に販売を始めた。06年に英国専門誌のジャパニーズモルト特集で最高点を獲得。英国で開催される国際的な品評会「ワールド・ウイスキー・アワード」で、限定品が17年以降6年連続でさまざまな部門での最高賞を受けている。
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