「中学受験」で起きる親子の競争に小児科医が懸念を表明

受験戦争の始まり

 夏休みが終わり、秋から冬にかけて受験生たちの緊張感が高まる時期がやってきます。特に「中学受験」と呼ばれる親子の受験は、対策を始める時期が早まる傾向があり、首都圏では受験者数が急増しています。

熱望する学校へ向けて

 中学受験は子どもたちにとって大きな目標です。小児科専門医であり、子育て支援事業「子育て科学アクシス」の代表である成田奈緒子さんは、親たちに子どもの幸せについて考え直すよう促しています。

 成田さんは、「子どもが少しでも偏差値の高い学校に行くことや名の知られた大学に進学することで、幸せになるという考えは学歴偏重主義になりがちです」と話します。

 親たちはさまざまな理由で受験を後押しします。「自分自身が高学歴だから、子どもにも同じ道を歩ませたい」と考える場合もあれば、「学歴がなくて困難だったので、せめて子どもには…」と思う場合もあります。

子どもたちの健康への影響

 成田さんは、「中学受験によって子どもたちが本来の幸せから逸れてしまうことが、最も心配です。特に小学校6年生の夏休みごろから、様々な症状が現れる子どもが増えています。塾や模擬試験への向かう際にお腹が痛くなり下痢が止まらなくなる、吐き気がひどくて外出できなくなるなどがよく見られます。ストレスが溜まると爪を噛みまくったり、髪の毛を引っ張って脱毛症になってしまう子もいます」と述べています。

 さらに、厳しい競争の中で、子どもたちは親には知られない場所でいじめをしたり、八つ当たりをしたりして他人へのストレスをはけ口にしてしまうこともあります。

 勉強に熱中しすぎて睡眠不足になり、イライラしてしまう悪循環も起こります。もちろん、受験が子ども自身の希望である家庭も多いと思いますが、親として一度立ち止まり、考える必要があるというのです。

大切なのは「自分で考える力」

 「子どもが自分で考え、判断する力」は、脳の発達の中で最も重要な要素です。それは小学校4年生を過ぎてから形成されるもので、個人差はありますが、約10歳の時に発達します。ですから、10歳よりも前に受験させるとしたとしても、それは本当に自ら考えて決断したものではないと考えるべきだと成田さんは言います。

 子どもたちの未来のために、中学受験に取り組む前に、まずは子どもたち自身が望んでいるのか、よく考えてみるべきなのかもしれません。


Source: 日本ニュース24時間