廃炉費用、東電の経営に打撃 政府のエネルギー長期戦略にも影響


福島県楢葉町と富岡町にまたがる東京電力福島第2原発

 福島第2原子力発電所の廃炉を正式決定する東京電力ホールディングスには今後、40年以上かかるとされる廃炉の費用負担が重くのしかかる。立地住民の根強い反原発感情も浮き彫りになった格好で、今回の決定が他原発の再稼働に冷や水となれば、経済成長を支えるエネルギーの安定供給が損なわれる恐れもある。(佐久間修志)

 「(東電の提案に対する)地元の回答を待って、取締役会に諮ってまいりたい」。東電の小早川智明社長は福島県の内堀雅雄知事との面会後、神妙な面持ちで報道陣に話した。

 だが東電にとって、廃炉は苦渋の決断だ。福島第2原発の全4基の解体にかかる計2822億円のうち、今年3月末時点で2126億円を引き当てたが、残り696億円をどうまかなうかは固まっていない。東電は福島第1原発事故の賠償費用など22兆円のうち16兆円を負担する必要があり、大幅な負担増が避けられない。

 東電は賠償費用などの必要資金として年間5千億円を確保した上で、将来的に4500億円の最終利益を目標に掲げるが、期待する柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働について、柏崎市の桜井雅浩市長は7基のうち5基の廃炉計画提出を東電に求めており、先行きの見通せない状況が続く。

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 廃炉の影響は東電の経営だけにとどまらない。大和証券の大沢秀一シニアストラテジストは「福島第2の廃炉はほぼ既定路線だったが、柏崎刈羽まで飛び火した場合、国のエネルギー戦略を揺るがす事態になりかねない」と危惧する。

 福島第1原発事故が起きた東日本大震災以降、国の規制強化や立地自治体との協議が難航した影響で、国内で稼働する原発は震災前の54基から今や9基に減少している。福島第2を含め21基が廃炉を決めたほか、再稼働をめぐる国の審査が進まないなどの理由で、27基が稼働を停止している。

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