「誕生日をこんな風に祝ってもらったことはなかった」若者はなぜ〝九州のトー横〟に集うのか 夜の街で支援活動に同行して分かった「居場所」の大切さ

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5月末の土曜日、午後10時半。福岡市の繁華街・天神にある警固公園。小さなリュックを背負い、地べたに座り込んだ14歳の少女は、決してその場を動こうとしなかった。「家に親はいない。帰りたくない。野宿する」。少女にとっては家よりも、夜の街のほうが安心できる場所のようだった。

若者たちの「警固界隈」という居場所

10~20代の若者が、東京・歌舞伎町の「トー横」や大阪・道頓堀の「グリ下」といった繁華街の一角に集まっている。福岡では、警固公園がそういう場所だ。SNSでつながる彼らは「警固界隈」とも呼ばれる。

少女の隣で話に耳を傾けるのは、福岡市のNPO法人「あいむ」の藤野荘子さん(30)。夜の警固公園にたむろする少年少女に声をかけ、支援につないでいる。「アウトリーチ」と呼ばれるその活動に同行すると、虐待などで家や学校に居場所を失い、生きづらさを抱えている様子が見えてきた。(共同通信=井上陽南子)

「無力感にさいなまれる」現実

14歳の少女は帰ることを頑なに拒み続けた。「よくあるケースなんです」という藤野さん。無理やり家に帰すこともできず、途方に暮れている。危険な状況に置かれた目の前の子どもを守れず、無力感にさいなまれることも多い。

17歳という別の少女の足元には、空になった市販の風邪薬のシートが散らばっていた。薬30錠を飲んだという。薬物の過剰摂取、オーバードーズだ。高揚した様子で笑い声を上げている。なぜ飲むのか気になって、記者が理由を尋ねてみると、少女はこう答えた。

「オーバードーズすると、頭がふわふわして何も考えなくていいの」

口調にあどけなさの残る少女は、藤野さんによると「ネグレクト」だとみられる。以前話した時は「ちゃんとした親の愛がほしい」とこぼしたという。

6月下旬の土曜日は、藤野さんが集まった若者にお菓子を配りながら近況を尋ねていた。その様子を見て、記者の隣に座った19歳の少年は「僕もこんな活動がしたい」と話し始めた。自宅は居心地が悪く、家出を繰り返したという少年。今は保護観察中で、施設で暮らしているという。「ここは僕と似た境遇の子も多い。そういう子の力になれる仕事がしたい」

【※この記事は、記者が音声でも解説しています。共同通信Podcast「きくリポ」を各種ポッドキャストアプリで検索いただくか、以下のリンクからお聞きください】日本ニュース24時間
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