奈良市議会の臨時議会が31日閉会し、6月議会で補正予算案から削除された市役所本庁舎の耐震改修費について、長寿命化工事の一部が減額修正され、残りは原案通り可決した。知事と市長による論争にまで発展した庁舎問題は、市長が推す耐震改修で決着した。
市役所本庁舎は北棟を除く3棟の耐震性に問題があり、仲川げん市長は財政状況などを理由に、負担の少ない庁舎の耐震改修での対応を計画した。だが、荒井正吾知事は今年1月、平城宮跡南側の積水化学工業奈良事業所跡地への移転建て替えを提案。耐震改修の方針を堅持する仲川市長に対し、荒井知事は独自の試算に基づいてメリットを再三強調した上、市議会の勉強会に出向いて移転案をPRするなど、意見対立は徐々に激化していった。
7月18日には県庁で公開会談が行われたが、議論は物別れに。仲川市長は「方向性を覆すほどのインパクトがある提案はなかった」として、耐震改修費12億8300万円を計上した今年度一般会計補正予算案と、来年度分の19億4600万円の債務負担行為を臨時議会に提案していた。
修正案で削除されたのは、いずれも議会棟2階部分の議員控室の壁などの改修費▽多目的トイレ設置費-の計3800万円。仲川市長は「市の方向性が決定した。安全のために早急に耐震化を進めたい」と述べた。県との関係については「互いの立場を考え、意見を言える間柄が理想。必要に応じて議論を深めていきたい」と話した。