【ムロ秀吉の退場劇】NHK大河ドラマ『どうする家康』が高評価

ムロツヨシが演じる秀吉

NHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)の第39回が放送され、俳優・ムロツヨシが演じる秀吉の最期が描かれました。このエピソードは、チーフ演出・村橋直樹氏が秀吉の最期を描く上でのコメントも交えて紹介されました。

秀吉の多様な表現に注目

第39回では、秀吉が天下人として頂点に立ち、老いという現実に向き合う様子が描かれました。ムロツヨシさんは、秀吉の底知れない魅力や謎めいた一面を独特なリズム感で演じています。その演技は、柔らかさから冷たい表情までの温度差や急激な変化で家康を翻弄させ続けました。

変幻自在に他者を操ってきた秀吉が老いに翻弄されていく姿は、ムロツヨシさんの絶妙な演技で見事に表現されています。例えば、第二次朝鮮出兵を決めるシーンでは、秀吉が家康に背を向けて席に戻る瞬間の表情は、少しうつろで驚きと混乱が交差しているように見えます。

人々を操りながら自分自身も制御が効かなくなっていく秀吉の苦悩は、地頭の良さによってまだコントロールできる場を作り出す力を持つ歴史的な人物の悲哀を見事に描き出しています。一瞬の演技ですが、このシーン以降、秀吉の正気や意図が分からず、一層視聴者を引き込んでしまいます。

才能を惜しんだ演出の提案

家康との会話シーンでは、秀吉は自身の死後に天下を託し、「すまんのう」と呟きます。その時のムロツヨシさんの真剣で誠実な表情は、秀吉の最期への感謝や謙虚さを伝えています。ムロツヨシさん自らが追加のセリフを提案し、役柄に寄り添った演技を披露してくれたのです。

また、茶々に看取られるシーンでは、秀吉が血を吐きながら笑顔を浮かべる場面があります。これは戦国時代の怪物である茶々の誕生を祝うような表現であり、家康に天下を託した直後にも関わらず、秀吉の複雑な心情が浮かび上がります。このシーンこそが、このドラマにおける秀吉の真髄なのです。

ムロツヨシの熱い思いと印象的な退場劇

ムロツヨシさんは、第39回の撮影に臨む際に「最期まで(このドラマの)秀吉でいたい」と語っていました。彼の言葉には嘘のように聞こえるものの、実は本音とも言える本物の秀吉像が込められています。役柄の対極にあるものを内包することが、このドラマにおける秀吉像の魅力なのでしょう。

ムロツヨシさんは、トリックスターのように物語をかき回し、けん引してきました。このドラマでは、急に善人になるような描写はありません。清濁併せ呑んだ英傑としての強烈な印象と、物語における大きな火種を残す、素晴らしい退場劇でした。

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