ゼレンスキー大統領、エネルギーインフラへの攻撃を受ければ報復すると示唆

ウクライナは暖房シーズンの到来に伴い、「エネルギーインフラへの攻撃」が懸念される状況です。ゼレンスキー大統領は今年は「守るだけではなく対応する」と述べ、エネルギーインフラへの攻撃に対して報復する姿勢を示しました。

まもなく始まるエネルギーインフラを巡る攻防、今年はロシア人も冬の厳しさに直面する

ゼレンスキー大統領は10月上旬に、「冬にロシアがエネルギーインフラへの攻撃を再度試みるだろう。これを阻止するためウクライナはパートナーと協力して多くの措置を講じている。特にドイツとは追加のパトリオットシステム提供で、スペインとも追加のホークシステムやエネルギー設備の支援で合意した」と述べ、気温の低下する10月下旬から11月上旬にかけて「エネルギーインフラ」を巡る攻防が再び発生すると主張しています。

ロシア軍によるウクライナへのミサイル攻撃(無人機を含む)

期間 Shahed-136×機数(撃墜数) 各種ミサイル×発数(撃墜数)
2022.09 26機(24機) 5発(4発)
2022.10 244機(236機) 230発(149発)
2022.11 63機(62機) 184発(134発)
2022.12 99機(94機) 261発(186発)
2023.01 108機(108機) 96発(75発)
2023.02 45機(40機) 142発(79発)
2023.03 89機(71機) 79発(38発)
2023.04 71機(60機) 23発(21発)
2023.05 408機(369機) 185発(154発)
2023.06 214機(169機) 194発(132発)
2023.07 238機(199機) 142発(83発)
2023.08 162機(132機) 136発(79発)
2023.09 503機(396機) 95発(79発)
2023.10 258機(203機) 26発(6発)

ロシア軍の総発射数:4,326発、ウクライナ軍の総迎撃数:3,424発

Shahed-136×2,528機(撃墜数2,163機)、各種ミサイル×1,798発(撃墜数1,261発)

ウクライナの一部地域では暖房シーズンが始まり、ロシア軍も冬に備えて巡航ミサイルやShahed-136(国内工場で生産したカスタムバージョンを確認済み)を備蓄している可能性が高いです。データからは巡航ミサイルの使用を控えていることが読み取れ、エネルギーインフラへの攻撃がいつ起こるか不明な状況です。

米国もエネルギーインフラの攻防に備えて「FrankenSAM」というプログラムを進めています。これは旧ソ連製のBukにAIM-7を統合し、同盟国やパートナー国から提供されたレーダーやコンポーネントを組み合わせて地上発射できるAIM-9Mシステムを作り出すものです。また、倉庫にしまってあったホークシステムの整備やアップグレードも進められています。

ウクライナ国防省情報総局のブダノフ中将は報道陣に対し、「再びエネルギーインフラへの攻撃を受ければ報復する」とのコメントをしています。ゼレンスキー大統領も同様に「我々はエネルギーインフラへのテロ攻撃に備えている。今年は守るだけではなく対応する。このことを敵は良く知っているはずだ」と述べており、今年の冬は「ロシアが一方的にエネルギーインフラを攻撃する」だけではなく、「双方がエネルギーインフラを破壊し合う」という状況になる可能性があります。

ウクライナは西側製の長距離攻撃兵器であるHIMARS、ストーム・シャドウ、SCALP-EG、ATACMSをロシア領内の攻撃には使用することができません。そのため、自国の長距離攻撃兵器を駆使してロシアのエネルギーインフラにどれだけのダメージを与えることができるかはまだ不明です。ただ、確かなのは「ロシア人も冬の厳しさに直面する」ということです。

なお、ゼレンスキー大統領やウクライナ軍関係者は「冬季攻勢の実施」を示唆していましたが、そのためには武器や物資が必要です。しかし、現時点で米国からのウクライナ支援資金の行方は不透明です(バイデン政権は600億ドルのウクライナ向け資金を含む1,000億ドルの追加資金を議会に要請中)。早急に決まらないと「冬季攻勢の実施」が難しくなり、来年の攻勢にも支障が生じる可能性があります。

ウクライナとロシアの電力を巡る戦い、今年の冬は昨年の再現に終わらないことでしょう。

※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE

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