阪神・オリックス優勝パレードに「黄信号」 波乱含みの11・23舞台裏

阪神・オリックス優勝記念パレードのルート

日本シリーズが59年ぶりの関西対決となり、盛り上がりを見せたプロ野球。シーズンのフィナーレを飾るのが、23日に予定される阪神、オリックス両軍のリーグ優勝を祝うパレードだ。だが、実行委員会が2025年大阪・関西万博のPRも兼ねた開催を発表すると、「政治利用では」との批判が上がる一方で、「勤労感謝の日」のボランティア動員に大阪府の職員労働組合が異議を申し立てる事態に。資金面も盤石とはいえず、万博同様、課題山積の中での実施となりそうだ。

念願かなったものの

パレードは大阪、神戸の両市で開催することになり、大阪市では同市のメインストリート御堂筋の「北浜3」交差点から「新橋北」交差点までの約1・7キロ。神戸市では東遊園地前からフラワーロードや三宮中央通りを経て、メリケンパークを目指す約2キロの行程で、午前と午後に両軍が入れ替わる形で交互に登場する。

「兵庫と大阪でダブルパレードをやれたら」

今年6月、セ・パ交流戦の阪神-オリックス戦で始球式を終えた大阪府の吉村洋文知事は、兵庫県の斎藤元彦知事とともに記者団の取材に応じ、両軍のリーグ優勝を祈ってこう宣言、念願がかなった形だ。

ただ、両軍が本拠地を置く大阪府や兵庫県などでつくる実行委が、9月に発表したタイトルが物議をかもすことに。

そのタイトルは「兵庫・大阪連携『阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード』~2025年大阪関西万博500日前!~」

会場建設費の増額や海外パビリオンの建設遅れなど何かと課題山積のイメージが先行する万博。それだけに、パレードという明るい話題に相乗りし、令和7年4月の開幕に向けた機運を醸成する狙いだった。

だが、「両軍のリーグ優勝を祝うパレードになぜ万博の文字があるのか?」とファンらが交流サイト(SNS)上で反発。府にも「優勝の喜びに水を差された気分。パレードを政治利用するのはやめてほしい」との意見が寄せられた。

こうした反応を受けて吉村氏も、万博PRについては「パレードと一線を画す」と軌道修正。「趣旨にそぐわないとの意見もあった」として、万博の運営主体「日本国際博覧会協会」を実行委に加えず、万博色を薄めての開催となった。

資金面は強気だが…

パレードは数十万人の人出が見込まれる中、警備などの安全対策も一筋縄ではいかない。実行委は昨年10月、多数の死者を出したソウル・梨泰院(イテウォン)の雑踏事故を念頭に警備態勢の強化を計画。2会場で両軍の入れ替え開催という事情も相まって、開催費用は過去の優勝パレードの3倍強にあたる5億円と見積もる。

吉村氏は「パレードに公費は投入しない」として、開催費用はクラウドファンディング(CF)と企業からの協賛で賄う算段だ。両軍の優勝記念グッズを返礼品として先月18日に始めたCFの支援金額は、5日正午現在で約4800万円となっている。

実行委は企業協賛を含めた目標金額の達成率を明らかにしていないが、府の担当者は「集め切る決意で臨んでいる。目標金額に届かなかった場合のことは考えていない」と強気だ。

ボランティアか勤務か

一方、職員の間では温度差も生じている。大阪府は職員を対象に、パレード来場者の誘導や回り道の案内などにあたるボランティアとして、1500人を目標に募集。当日は勤労を尊ぶ「勤労感謝の日」にあたるが、拘束時間が約7時間となるだけでなく、食費や交通費は出ず、支給されるのはスタッフジャンパーのみだ。

府職員労働組合は10月23日、「どうしても職員を配置する必要があるのであれば、業務として指示すべきだ」とする声明を発表。兵庫県と神戸市では休日出勤扱いで計1500人を動員するだけに〝格差〟が鮮明となった。

「プロの警備員は配置するが、安全対策を徹底するため念には念を入れてボランティアを募集している。強制ではないので、来るか来ないかは職員次第」と府の担当者。たかがパレード、されどパレード。何かと波乱含みの様相を見せている。(五十嵐一)

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