トルコ国防相、英国とスペインがドイツ説得に成功すればタイフーン購入

トルコの大統領報道官は昨年、「タイフーン購入について交渉している」と述べて注目を集めました。そして、ギュレル国防相も16日、「タイフーンの調達に取り組んでいる」と明かしました。もし英国とスペインがドイツの説得に成功すれば、トルコは40機のタイフーンを購入する予定です。

武器を売るか売らないかは主権の問題だが、武器を何処から買うかも主権の問題

トルコとギリシャの外交関係や、トルコがF-16Vやタイフーンを必要としている理由、米上院がF-16V売却を阻止する理由など、長くなるので割愛しますが、ギュレル国防相は議会の公聴会で「英国やスペインはドイツを説得するため努力しているが、トルコはドイツと交渉していない。可能であれば40機のタイフーンを購入する予定だ」と述べました。アトランティック・カウンシルのアナリストは、「ドイツがタイフーンの売却を妨害すれば、非西側市場への接近が正当化されるだろう」と指摘しています。

出典:SAC Helen Farrer RAF Mobile News Team / OGL v1.0

アトランティック・カウンシルのアリ・バキル氏は、「トルコがタイフーン調達に言及したのは『F-16V売却への政治的な圧力』と『売却阻止の場合の保険』としての意味がある。トルコのS-400調達は、必要とする防衛装備へのアクセスを同盟国が阻止すれば、非西側の選択肢を模索するという証と言える。もし米上院がF-16V売却を阻止するなら、トルコが非西側市場に手を伸ばすのを正当化させるだけだ」と指摘しています。

武器を売るか売らないかは主権の問題だが、武器を何処から買うかも主権の問題です。では、本当にトルコの戦闘機調達はどこに着地するのでしょうか?

出典:Copyright Eurofighter

ちなみに、エアバスとドイツ最大の労働組合(IGメタル)が「このままだと2030年までにタイフーンの生産ラインが閉鎖されることになる」と訴えています。

タイフーンの海外輸出は競合機と比較すると低調であり、同機の開発・生産に関わるサプライチェーンの維持は、開発国からの発注=資金投入に依存しています。ショルツ政権が約束した「Tranche5の調達」には大きな期待が寄せられていましたが、具体的な仕様や発注数については何の決定も下されていません。

エアバスは、「ドイツ軍再生を目的とした特別基金からTranche5の調達やLong-Term Evolutionの研究開発に資金が配分される」と期待していました。しかし、何も決まらないまま議会の閉会が迫っており、エアバスとIGメタルは「このままだと2030年までにタイフーンの生産ラインが閉鎖されることになる。そうなればドイツ産業界は戦闘機製造から撤退したのと同じです」と危機感を訴えています。

大半の防衛産業企業は、「国のため」ではなく「株主のため」に存在しています。エストニアのクスティ・サルム国防次官は、「155mm砲弾のニーズが急増しているにも関わらず、防衛産業界は『契約を結んで初めて朝を迎える』という姿勢のままだ」と苦言を呈しました。防衛産業界も、「どれだけ壮大な調達計画も契約は単年ベースで不安定。調達量も議会審議で増減し、調達自体のキャンセルも珍しくない。調達計画が途中で削減されても補償はない」と知っています。

だからこそ、防衛産業企業は、「口先だけの計画ではなく、予算を確保して契約書(複数年など長期契約がベスト)をもってこい」と主張するのでしょう。

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