パリの街を映し出すマンションのCMで耳にしたあの曲。作曲者片柳さんの数奇な人生とは?
F1中継の合間に
「Serenity / Deep inside of me / Window of my dreams / My treasury」
このキャッチーな歌詞で始まるCM音楽、あなたも聞いたことがあるのではないでしょうか?この曲は「クリオマンション」シリーズのために作られた「アパルトマン」という楽曲です。豪華な弦楽アンサンブルと美しい歌声があなたの心に西欧への憧れを植え付けます。
このCMは、かつてアイルトン・セナらの活躍で盛り上がっていたモータースポーツの「F1グランプリ」の中継などで頻繁に放送されていました。そのため、多くの人々の記憶に残る作品となりました。
この素晴らしい楽曲を創り出したのは片柳さんです。1953年、東京都の出身で、ビートルズに深い影響を受けた彼は、若かりし頃にはインドの民族楽器シタールを独学で習得し、ジャズに傾倒していました。
ファッションから音楽の世界へ
高校卒業後、片柳さんはフランスのパリ大学で学び、ファッションブランド業界で働く一方、音楽への興味も持ち続けていました。彼は世界的デザイナー三宅一生さんの事務所で働き、作品の写真集の編集に関わるなど幅広い経験を積みました。
1979年、片柳さんはモジュラーシンセサイザーを入手し、本格的な音楽創作に取り組むようになりました。彼の作品は、イエロー・マジック・オーケストラが牽引したテクノポップブームの中でも大きな注目を浴びました。
その後、片柳さんはCM音楽に活動の中心を移しましたが、2010年には携帯ゲーム機ニンテンドーDSだけでテクノポップを演奏する実験プロジェクトを立ち上げ、多くのアルバムを発表しました。
しかし、2017年に肺がんが見つかり、脳に転移しました。そして、2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが広がる中、都内の病院で66歳で息を引き取りました。
片柳さんの功績は、日本の音楽史に大きな足跡を残しました。彼の素晴らしい楽曲は、今もなお多くの人々の心に響いています。