高齢ドライバーによる自動車事故が社会問題化する中、経済産業省は27日、高齢者の安全な移動手段の確保や、公共交通機関の廃止が進む過疎地での移動手段の確保、電動キックボードなど自動車に代わる新たな移動手段の普及について課題を探る「多様なモビリティ(移動手段)普及推進会議」の初会合を開催した。自動車大手各社や自治体、有識者が、さまざまな移動手段の普及に必要な制度整備などを議論する。
初会合では、主に高齢者を対象に、安全で自由な移動を確保するための手段として、トヨタ自動車が来年発売する軽自動車よりも小さい「超小型電気自動車(EV)」が紹介された。最高速度が60キロに抑えられているため事故時に「被害者に与えるインパクトが小さい」(経産省)のが特徴という。トヨタの担当者は「電池性能を含めた商品力の向上、充電サービス、超小型モビリティに適した自動車保険制度の在り方も議論したい」と述べた。
また、ブリヂストンサイクルの担当者は、免許を自主返納した高齢者向けに電動アシスト自転車の普及を図るために出張試乗会の事例を紹介。高齢者向けにはサドルやフレームの高さを低くして乗りやすくしている商品を販売しているという。
一方、欧米でシェアリングサービスとして普及が進む電動キックボードについて、国内で普及を目指すベンチャーのLuup(東京)が紹介。駐車スペースが自転車の半分程度とシェアリングに向いていることや、自転車と違ってまたがる必要がなく女性も利用しやすいなどの特徴を説明した。BMWなど欧米の自動車大手も製造を始めるなど市場規模の拡大も見込まれており、Luupの担当者は「現在は原付免許が必要だが速度を抑えることで自転車と同じ位置づけとしてもらえるような制度整備を提案したい」と述べた。
世耕弘成経産相は「国土交通省、警察庁も会議に参加しているので省庁の枠を超えて制度整備も進めていきたい」と述べた。今後、高齢者向けに自動車の代替移動手段の購入補助金の給付など普及の具体策も議論される見通しだ。