Z世代は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)真っ最中に社会に出た。だが、起業家向けの米雑誌Incの最近の記事によると、雇用主の60%が今年採用したZ世代の従業員を解雇したことを認めている。こうした状況から、なかなか仕事が続かないZ世代が多いのはなぜかが話題になっている。
「Z世代は怠惰で、権利ばかり主張し、未熟だからだ」などと紋切り型の考えで片付けてしまうのは簡単だが、問題はもっと複雑だ。このような事態が起こっている理由を理解するには、Z世代と従来の職場との関係に目を向ける必要がある。Z世代が仕事を続けるのに苦労している理由として考えられるものは3つある。
■1. やる気の欠如 ─ 必ずしもZ世代のせいにあらず
Z世代に対する最も一般的な批判は、やる気が見られないというものだ。Z世代は生涯で達成したい目標を掲げて「一生懸命」働くということをしない、と主張する声は、ミレニアル世代からベビーブーム世代まで多く聞かれるが、それはなぜかを掘り下げようとする人はあまりいない。
2008年の金融危機からコロナ禍の混乱に至るまで、Z世代は雇用主が忠実な従業員をどのように扱うかを目の当たりにしてきた。解雇、減給、雇用の不安定さは、Z世代の親たちが抱える共通のテーマだった。
こうした視点に立てば、Z世代が従来のキャリアパスになぜ懐疑的になるのかがわかる。努力が必ずしも報われるとは限らないと知れば、「自力で苦境を乗り越える」のは難しいかもしれない。
大手会計事務所デロイトの報告書によると、Z世代は従業員や社会問題に配慮している企業を高く評価している。一方で、彼らはそうした価値観と相容れない不安定な労働市場や、従業員からあらゆるものを搾取する企業を見てきた。他の世代の目に映るZ世代のやる気の欠如は、自己防衛の一形態であり、頑張ってもさほど安定が得られない環境に身を置くことへのためらいなのかもしれない。
■2. コミュニケーション方法の違い
Z世代が職場で直面する問題につながっているもう1つの要素はコミュニケーションだ。この世代はネットやデジタル機器がある環境で生まれ育った「デジタルネイティブ」と称されることが多いが、それが従来型の職場環境において強力な対人スキルにつながるとは限らない。SNSやテキストベースのやり取りにどっぷり浸かって育ったため、多くの若い社員は対面での意思疎通、特に職場でのやり取りに苦戦する可能性がある。