デビュー30年で映画初主演の苦労人俳優語る 2度の大腸がん、脳梗塞乗り越え「いろんな奇跡が…」


【写真】「Good Dreams」のワンシーン。注目の若手美人女優・松田有咲と苦節30年の渡辺隆二郎

 「自分が無名の俳優なので、お客さんが入ってくれるのか心配していましたが、好調スタートと聞いてうれしく思っています。自分が主演で、大きな画面に映っているのが本当に夢のようです」

 トレードマークのリーゼント姿で感慨深げに語った。

 魚河岸や工事現場などで働きながら生活費を稼ぎ、「どんな役が来てもいいように」と早朝の10キロのランニング、空手などの武道のトレーニングを続ける日々を送っている。そんな生活の中、43歳の時、初期の大腸がんが見つかり内視鏡で切除、51歳で再び初期の大腸がんが分かり、この時も手術した。この間、舌にも腫瘍が見つかり切除。顔面麻痺にも2度なった。「幸いにも、がんは初期でしたが、体に変化が起きる度に死を考えることがありました」と振り返る。

 体調が戻ると、再び日課のトレーニングとアルバイトの日々。声が掛かれば舞台にも積極的に出演した。ただ、チケットのノルマを自腹で購入することも少なくなかった上に、面倒見の良い性格から後輩俳優たちへごちそうする費用も必要で、サラ金から借金することもしばしばだったが「きちんと期限に返すからサラ金からの信頼は厚かったですね(笑い)」。カツカツの追い込まれた生活を繰り返しながらも、演じることの楽しさを追い続ける渡辺と知り合い、魅力を感じた井上監督が「いつかりゅうちゃん主演の映画を作りたい」と約束し、クラウドファンディングによる製作を実現させた。

 苦節30年でやっとめぐってきた夢の舞台。クランクインが昨年8月と決まり、準備を進めていたが、昨冬、渡辺は今度は脳梗塞で緊急入院。視神経に影響が出て視界がゆがんで見え、歩くことがままならなくなった。井上監督ら周囲が「撮影はもう難しいのでは」とあきらめかけたこともあったが、医師も驚く回復を見せ、撮影を予定通り行い、今回の公開に至った。渡辺は「回復できて、撮影できたことを本当にありがたく感じています。この映画を作るようにいろんな奇跡がありました」と感謝している。

 映画では、夢をあきらめないりゅうちゃんが人助けへ奔走する姿が描かれ、製作サイドには「涙があふれた」「勇気をもらいました」などの声が多数寄せられている。

 渡辺は「見て下さった人が今まで出会った誰かに会いたくなるような、そんな作品になれたらうれしいです」。苦労を乗り越えてきた人だからこその静かな優しさあふれる口調で語った。



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