役所広司:無名塾から時代劇スターへ、そして名優としての道を歩むまで

無名塾での日々:厳しい指導と貴重な出会い

日本を代表する名優、役所広司さん。その俳優人生は、仲代達矢さん主宰の「無名塾」から始まりました。

若き日の役所さんは、岸田國士やシェイクスピアの古典作品に挑みながら、先輩俳優たちの演技を間近で見て学ぶ日々を送っていました。神崎愛さんや隆大介さんといった名優も輩出したこの塾で、役所さんは厳しい指導を受けながらも着実に演技力を磨いていきました。

入塾から半年後、役所さんは早くも舞台に立ちます。セリフのある役を任され、大道具などの裏方も経験しながら、全国を旅する公演の中で、仲代さんが役を作り上げていく姿を目の当たりにしました。この経験は、役所さんにとって貴重な学びになったと、後に著書「監督の油」で語っています。

時間にルーズ? 遅刻癖と恩師・仲代達矢の教え

そんな役所さんですが、意外にも(?)時間にルーズな一面があったようです。入塾式に遅刻したことから仲代さんの怒りを買い、その後も遅刻癖は治らなかったといいます。「1時間、2時間前に来い!」と叱責され続け、その影響か、今では現場に早く行く習慣が身についたと語っています。

NHKドラマで掴んだチャンス:織田信長役で一躍時の人へ

無名塾で経験を積んだ役所さんは、1979年に映画デビュー。その後も映画やドラマに出演するようになり、1980年にはNHK連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」で特攻隊員役を熱演し、注目を集めます。

そして、1983年、大河ドラマ「徳川家康」の織田信長役に抜擢されたことが大きな転機となりました。野性味あふれる演技は、お茶の間の視聴者を魅了し、一躍時の人となったのです。この演技で、数々の賞を受賞し、名実ともに人気俳優の仲間入りを果たしました。

無名塾の同期・益岡徹との友情:互いに高め合う盟友の存在

無名塾時代、役所さんにはもう一つ、大きな出会いがありました。それは、同期で入塾した益岡徹さんです。二人はよく酒を酌み交わし、時には酒の匂いを漂わせながら稽古に励んだという仲。

その後、益岡さんは映画「マルサの女2」で注目を集め、役所さんの初監督作品「ガマの油」など、多くの作品で共演しています。役所さんは「彼がいると安心できる」と語っており、益岡さんは、俳優としての青春時代を共にした、かけがえのない存在といえるでしょう。

時代劇スターとしての地位を確立:宮本武蔵役でさらなる飛躍

「徳川家康」の翌年、役所さんはNHKが新たに設けた水曜時代劇枠の第1弾「宮本武蔵」で、主役に抜擢されます。荒々しくも力強い武蔵像を体現し、時代劇スターとしての地位を確立しました。

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無名塾での厳しい修行、恩師や仲間との出会い、そして数々の作品との出会いを経て、役所広司は名優へと成長していったのです。