酔った道長からの“和歌ハラスメント”紫式部の「見事な返し」。歌を聞いた道長はどんな反応だったのか


【写真】宇治にある源氏物語ミュージアム

 「埋もれ木を折り入れたる心ばせ」

 紫式部は自身の性格をそんなふうに表現している。

 「埋もれ木をさらに埋めたような引っ込み思案な性格」というのだから、対人関係にかなり難があったのだろう。少なくとも、本人はそう思っていたようだ。事実、一条天皇の中宮である彰子のもとに仕えたときも、内裏での生活になじめず、すぐに実家に帰ってしまった。

 それでも実家にしばしひきこもると、女房の仕事に復帰。彰子のもとで月日を重ねるうちに、段々と宮仕えにも慣れてきたようだ。とても「陰キャ」とは思えない行動もとるようになった。

 彰子がさまざまな香を混ぜて練り香を作って、女房たちに配っていた。式部も彰子のもとに受け取りにいき、部屋に戻ろうとすると、「宰相の君」の部屋の前を通りかかった。宰相の君とは、藤原道綱の娘・豊子のことで、式部と同じように女房として彰子に仕えていた。

■昼寝中の女房とキャッキャと戯れる

 式部が部屋をのぞいたところ、豊子は昼寝をしていたという。その姿を、式部はずいぶんと観察していたようだ。『紫式部日記』に、次のように記している。

 (萩、紫苑、いろいろの衣に、濃きがうち目、心異なるを上に着て、顔は引き入れて、硯の箱に枕して、臥し給へる額つき、いとらうたげに艶かし)

 目を奪われているうちに「絵に描かれるような、素敵なお姫様のような雰囲気だわ! (絵に描きたるものの姫君の心地すれば)」とテンションが上がったようだ。寝ている豊子に、式部は声をかけた。



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