毎年記録的な猛暑が報じられる中、かつては女性の持ち物というイメージが強かった日傘が、今や男性の間でも当たり前のアイテムとなりつつあります。この「日傘男子」の増加は単なるファッションのトレンドに留まらず、深刻化する夏の暑さへの切実な対策として注目されています。本記事では、この新たな社会現象の背景と、その実用性について、「傘ソムリエ」の視点から深く掘り下げます。
「傘ソムリエ」が語る日傘男子の現状と意識の変化
国内外で傘の魅力を発信する「傘ソムリエ」として活動する土屋博勇喜氏は、日傘男子の増加について、その実態と背景を詳細に分析しています。土屋氏は230本もの傘を所有するほどの根っからの傘愛好家であり、その専門的な知見は、このトレンドの理解に不可欠です。
土屋氏がテレビ番組と協力して行った調査によると、昨年の男性日傘ユーザーが約10人に1人だったのに対し、今年は4人に1人にまで急増したことが明らかになりました。さらに、ウォーターフロント社が実施した「日傘の利用実態調査 2025」では、今年から日傘デビューを検討・実行した層で最も多かったのは30代男性（23％）であり、その利用理由のトップは「熱中症対策」（74.8％）でした。このデータは、日傘がもはや日焼け防止といった美容目的だけでなく、命を守るための健康ツールとして認識されていることを明確に示しています。
土屋氏は、男性利用者増加の背景にある要因として、日傘のデザインの変化を挙げています。従来のフリルや刺繍といった装飾的な要素を排し、くすみのある白、ベージュ、グリーンなど、性別を問わず使いやすいシンプルなカラーリングと中性的なデザインが増加。これにより、男性も抵抗なく日傘を手に取りやすくなりました。また、メーカー各社も紫外線対策だけでなく、より高性能な遮熱機能に注力し始めており、晴雨兼用や遮光はもはや標準機能となり、遮熱性や撥水性に特化した製品が主流となっています。
日差しの中、日傘をさして歩く男性。近年、熱中症対策として男性用日傘の利用が広がる背景を象徴する一枚。
「日傘の需要は、美容から健康へと大きくシフトしている」と土屋氏は強調します。この意識の変化は、今後の製品開発にも大きな影響を与えることでしょう。
猛暑を乗り切る！遮熱性・利便性に優れた日傘の選び方
体感温度の低下に直結する遮熱性は、日傘選びの重要なポイントです。土屋氏は、単なるメーカー公称値ではなく、自身が大阪万博会場で実際に温度計を用いて検証し、傘の内外で1〜2度の温度差を確認できた「さすと確かに涼しい」と実感できた日傘の重要性を説きます。
遮熱性の高い日傘を選ぶことで、直射日光による体温上昇を効果的に抑え、熱中症のリスクを軽減できます。また、男性が日常的に使用することを考えると、軽量性、携帯性、そして耐久性も重要な要素となります。持ち運びやすさや、突然の強風にも耐えうる丈夫な構造は、忙しいビジネスパーソンやアクティブなライフスタイルを送る男性にとって、日傘を「実用的な道具」として定着させる上で不可欠です。
まとめ
日傘男子の増加は、日本の夏の気候変動に適応するための自然な流れであり、性別に関わらず自身の健康を守るという意識の高まりを反映しています。美容意識の向上だけでなく、熱中症対策という喫緊の課題への具体的な解決策として日傘が普及していく中で、今後はさらに機能性、デザイン性、そして携帯性を兼ね備えた日傘が市場を牽引していくことでしょう。日傘はもはや特別なアイテムではなく、現代の猛暑を乗り切るための必須ツールとして、私たちの生活に深く根ざし始めています。
参考文献
- ウォーターフロント. 「日傘の利用実態調査 2025」.
