猟犬の悲しい現実:捨てられる命、救う手。そして、私たちにできること

猟犬と聞くと、ハンターと固い絆で結ばれ、共に狩猟を楽しむ姿が思い浮かびます。しかし、その裏には、病気、老齢、猟期終了といった理由で簡単に捨てられる、悲しい現実が存在します。今回は、猟犬の遺棄問題の実態と、その解決に向けた取り組み、そして私たちにできることを探っていきます。

捨てられる猟犬たち:その背景にあるもの

千葉県市川市の『GUNDOG RESCUE CACI』代表、金子理絵さんは、長年、多頭飼育崩壊の犬の保護活動に携わってきました。その中で、鳥猟犬が愛護センターで殺処分されているという衝撃的な事実を知り、2008年から猟犬の保護・譲渡活動に特化して活動を始めました。

千葉県は、平坦な土地が多く、鳥猟が盛んな地域です。都内からのアクセスも良いことからハンターも多く、その結果、猟犬の遺棄数が全国的に見ても突出しているという現状があります。金子さんによると、遺棄された猟犬は河川敷や海べり、野原などで発見されることが多く、人馴れしていないため捕獲も困難だといいます。

中には、狩猟中に逃げ出したり、はぐれたりした犬もいるでしょう。しかし、中には、毒薬を混ぜた餌を食べさせ、山に捨てるといった残酷なケースも存在するといいます。また、かつては個人繁殖された猟犬の売買も行われており、買い手がつかない犬が遺棄されるケースもあったそうです。

猟犬はただの「モノ」? 心ないハンターたちの存在

猟犬をただの「モノ」としか思っていないハンターもいるようです。家族でさえ犬の名前を知らず、「お父さんの趣味のための犬」としか認識していないケースもあるといいます。このようなハンターのモラルの欠如が、猟犬遺棄問題の根底にあると言えるでしょう。

alt: 猟犬のメラが、少し警戒しながらこちらを見つめている様子。alt: 猟犬のメラが、少し警戒しながらこちらを見つめている様子。

リトレーニング:捨てられた猟犬に新たな道を

保護された猟犬は、シェルターで病気やケガの治療を受け、リトレーニングを受けます。鳥猟犬はペットとは異なるため、家庭で飼うためには特別な訓練が必要となります。CACIでは、金子さんやボランティアスタッフが、それぞれの犬に合わせた餌やケアを提供し、朝夕の散歩も行っています。

散歩の際、鳥を見つけると本能的に追いかけてしまう猟犬たち。その姿はまさに鳥猟犬の本能を表しています。専門家によると、獲物を追う行動は、胸の筋肉を使うため、猟犬の健康維持にも良い影響があるそうです。しかし、同時に、人とのコミュニケーションを疎かにしないよう、室内でのトレーニングも並行して行う必要があります。

alt: 散歩中の猟犬たちが、鳩の群れに気づき、じっと見つめている様子。alt: 散歩中の猟犬たちが、鳩の群れに気づき、じっと見つめている様子。

私たちにできること:猟犬の未来のために

金子さんは、猟犬を捨てさせないための法整備の必要性を訴えています。また、ハンターの意識改革も重要です。既に一部の猟友会では、鳥猟犬の問題についての啓蒙活動が始まっているといいます。

私たちも、この問題に関心を持ち、自分にできることを考えていく必要があります。例えば、猟犬の保護団体への寄付やボランティア活動への参加、そして、周りの人にこの問題を広めることなどが挙げられます。小さな行動が、猟犬たちの未来を変える力となるかもしれません。

まとめ:共に生きる社会を目指して

猟犬の遺棄問題は、私たち人間の身勝手さが生み出した悲しい現実です。しかし、金子さんをはじめとする多くの人々の努力により、少しずつ解決の兆しが見えてきています。私たち一人ひとりがこの問題に向き合い、行動することで、猟犬と人間が共に幸せに暮らせる社会を実現できるのではないでしょうか。