日韓関係の行方が、10月28日に行われた衆議院議員選挙の結果に大きく左右されることとなりました。自民党を率いる石破茂首相は、今回の選挙で惨敗を喫し、その後の政局は混迷を極めています。韓国では、この選挙結果が日韓関係にどのような影響を与えるのか、固唾を飲んで見守っている状況です。
石破首相への期待と落胆
韓国では、石破首相は日韓間の懸案に対して比較的柔軟な姿勢を示してきたことから、一定の期待が寄せられていました。特に、徴用工賠償問題をはじめとする歴史問題において、大胆な決断を下してくれるのではないかと、内心期待する声も少なくありませんでした。
alt_text10月28日、総選挙投票日から一夜明けて会見する自民党の石破茂総裁(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
しかし、今回の選挙結果によって石破首相の求心力は大きく低下し、退陣の可能性まで取り沙汰される事態となりました。韓国政府関係者からも、「日韓関係改善への期待が薄れた」といった落胆の声が漏れ聞こえてきます。
韓国メディアの反応と専門家の分析
韓国メディアは、石破首相を「穏健な歴史認識を持つ政治家」として紹介することが多く、2017年に韓国紙『東亜日報』のインタビューで慰安婦問題に関して「相手が納得するまで謝罪しなければならない」という趣旨の発言をしたエピソード(石破氏本人は否定)などを度々取り上げてきました。また、安倍晋三元首相の強硬な対韓政策を批判してきた姿勢も、「親韓政治家」というイメージを韓国民に植え付ける要因となりました。
今回の選挙結果を受け、韓国外交部は公式なコメントを控えていますが、メディアを通じて政府関係者の懸念が伝えられています。ある関係者は、「石破内閣が苦境に陥ったことで、日韓関係の懸案に柔軟に対応することが難しくなった」と指摘しています。
韓国の外交専門家も同様の見方を示しています。峨山政策研究院のチェ・ウンミ研究委員は、「石破首相は党内基盤が弱く、選挙での影響力も限定的であるため、自身の信念に基づいた政策を展開することは難しくなった」と分析。また、申珏秀元駐日大使は、「石破首相は歴史問題に対して率直な立場を示してきたため、韓国としても期待していたが、今は前向きな措置の実現は難しい」との見解を示しました。
alt_text2011年12月、京都迎賓館で当時の野田佳彦首相と韓国の李明博大統領が首脳会談を行った。会談後、野田首相は「個人的な信頼関係が深まった」と語ったが、実際はこの会談を機に日韓関係は急速に悪化した
野田氏躍進への警戒感
さらに、今回の選挙で躍進した立憲民主党の野田佳彦代表の存在も、韓国にとっては懸念材料となっています。過去に野田氏が首相を務めていた時期、日韓関係は悪化していた経緯があり、韓国側には野田氏への不信感が根強く残っています。政権交代の可能性も視野に入れ、韓国は日本の政治状況を注視しています。
不透明な日韓関係の未来
今回の選挙結果によって、日韓関係の未来はより不透明なものとなりました。石破首相のリーダーシップが揺らぎ、野田氏が率いる立憲民主党が勢力を拡大する中で、韓国は今後の日韓関係の行方を不安な気持ちで見守っています。日韓両国がどのように歩み寄りを図り、関係改善を進めていくのか、今後の動向に注目が集まっています。