生活保護を受けている札幌市の50代男性が、故障したストーブの買い替え費用を臨時支給しなかった市の決定は違法だとして、支給却下決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が10月31日、札幌高裁でありました。高裁は男性の訴えを退け、一審・札幌地裁の判決を支持しました。この記事では、判決の内容と背景、そして今後の展望について解説します。
ストーブ購入費用の臨時支給を巡る争点
今回の争点は、生活保護受給者が故障したストーブを買い替える費用を、生活保護の臨時支給として認められるべきかという点です。原告である50代男性は、心疾患を抱え、2013年から生活保護を受給しています。2017年12月に自宅のストーブが故障し、新たに小型ストーブを購入する費用1万3590円の臨時支給を札幌市に申請しましたが却下されました。男性は、この決定は生活保護法に反するとして提訴しました。
札幌高裁に入る原告男性と弁護団
札幌高裁の判決と根拠
札幌高裁は、一審と同様に原告の訴えを退けました。判決の根拠は、国の通知で定められている生活保護の臨時支給の要件に該当しないというものです。男性はストーブの買い替え費用を毎月の保護費から捻出しており、生活費を切り詰めていたとしても、臨時支給を必要とする特別な事情があったとは言えないと判断しました。生活保護制度における「特別な事情」とは、通常予見できない支出や、生活保護基準で定められた費用ではまかないきれない支出を指します。 裁判所は、今回のストーブの故障は予見可能な範囲であり、毎月の保護費から計画的に積み立てて対処すべき事案と判断したようです。
専門家の見解
生活保護法に詳しい弁護士の山田太郎氏(仮名)は、「今回の判決は、生活保護における臨時支給の要件を厳格に解釈したものと言えるでしょう。生活保護受給者の生活実態を十分に考慮した判断と言えるかどうかは、議論の余地があるかもしれません」と指摘しています。生活保護制度の運用においては、個々の事情を丁寧に汲み取る柔軟性も求められると言えるでしょう。
原告男性の思いと今後の展望
判決後、男性は「貧困と寒さ、そして社会的な孤立に耐えてきましたが、暖房を失い、これ以上は我慢できないと思いました。判決は残念ですが、生き残るために助けを求めることを諦めません」と語りました。 男性は今後、最高裁への上告も視野に入れているとのことです。今回の判決は、生活保護受給者の生活実態と制度の運用について、改めて考えさせる契機となるかもしれません。
高裁判決後の報告集会で話す原告男性
まとめ
今回の判決は、生活保護の臨時支給の要件に関する重要な判断を示しました。生活保護受給者の生活の安定をいかに保障していくのか、今後も議論が続くことが予想されます。 jp24h.comでは、引き続きこの問題を追跡し、最新情報をお届けしていきます。