大阪・新世界を象徴する観光名所「通天閣」を運営する通天閣観光が、身売りを検討していることが明らかになりました。南海電気鉄道を筆頭に複数の企業と交渉を進めており、売却額は数十億円規模になると予想されています。
コロナ禍後の観光客増加と設備投資の必要性
コロナ禍が収束し、訪日外国人観光客を中心に通天閣への入場者数は急激に回復しています。2023年4月から2024年3月までの入場者数は、コロナ禍前を超える約137万人を記録しました。
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この盛況を受け、通天閣観光では時間帯に応じて入場料金を変動させる施策などを検討していますが、急増する来場者に対応するためのインフラ整備を単独で行うことが難しくなっているのが現状です。長期的な発展を見据え、設備投資を積極的に行うためには、より資金力のある企業グループ傘下に入る必要があると判断したようです。
南海電鉄による沿線開発構想とのシナジー効果
身売り先として有力視されている南海電鉄は、「グレーターなんば」構想と呼ばれる難波~新今宮駅周辺の沿線開発計画を推進しています。10月末には不動産事業を強化する組織改編を発表するなど、不動産開発を中核とした戦略を展開しています。通天閣を傘下に収めることで、この沿線開発に更なる弾みがつくと期待されています。
通天閣の歴史と新たな挑戦
初代通天閣は1912年に建設され、大阪のシンボルとして親しまれてきました。1943年の火災で焼失した後、地元住民の出資により通天閣観光が設立され、1956年に現在の2代目通天閣が再建されました。近年では、2022年に地上22メートルから地下1階まで滑り降りる「タワースライダー」をオープンするなど、新たなアトラクションの導入にも積極的です。
地域経済活性化への期待
通天閣観光は、周辺地域への経済波及効果を高める開発も視野に入れています。関西の食文化研究家でフードライターの田中美咲氏(仮名)は、「通天閣の身売りは、新世界エリア全体の活性化に繋がる可能性を秘めている。南海電鉄の豊富なノウハウと資金力によって、新たな魅力が創出されることを期待したい」と述べています。
訪日外国人観光客の増加に加え、国内観光客の誘致も強化することで、更なる発展が期待されます。
通天閣の新たな門出は、大阪の観光産業にどのような変化をもたらすのでしょうか。今後の動向に注目が集まります。