大阪府立病院機構が運営する大阪母子医療センター(大阪府和泉市)の産科主任部長である50代男性医師が、部下に対して日常的に暴言を浴びせるなどパワーハラスメントを行っていたことが、第三者調査委員会の調査で明らかになりました。機構は調査報告書を7日に公表し、今後懲戒委員会を開いて男性医師の処分を検討します。
胎児治療の専門医、実はパワハラ医師
2010年に同センターに着任し、2018年4月に産科主任部長に就任したこの男性医師は、胎児治療の専門医として知られていました。しかし、その裏では部下に対する常軌を逸した言動が繰り返されていたのです。
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「人間じゃない」「動物」… 繰り返された暴言の数々
複数の医師からの訴えを受けて設置された第三者調査委員会は、退職者を含む部下の医師計36人のうち、8割にあたる29人が精神的苦痛を受けたり、不適切な言動を見聞きしたりしていた事実を明らかにしました。報告書によると、主任部長は部下に対し、「人間としてとっくに失効しているだろう」「人間じゃないのに人間と思い込まされて育った」といった人格を否定するような暴言や、地方での産科医療を志望する医師に対して「(分娩の予約が来るのは)動物でしょう」といった侮辱的な発言を日常的に繰り返していたといいます。
抑うつ、退職… 深刻な被害の実態
これらの暴言は、医師たちの心に深い傷を残しました。他の医師がいる前で執拗に罵倒された結果、抑うつ状態に陥り退職に追い込まれた医師や、その場で号泣し「医師をやめよう」とまで思い詰めた医師もいたとのことです。さらに、主任部長は部下が勤務システムに入力した「当直できない日」のデータを無断で消去するなど、休暇取得を妨害する行為にも及んでいたとされています。 著名な産婦人科医である山田花子先生(仮名)は、「このようなパワハラは医師としての倫理に反するだけでなく、患者さんへの安全な医療提供にも悪影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
公益通報も… 隠蔽されていたパワハラ体質
調査委員会はこれらの言動をパワーハラスメントと認定し、「主任部長の言動が大きな原因となり、職場環境が害されている」と指摘しました。聞き取りに対して、主任部長は「冗談のつもりだった」などと釈明しているようですが、その言い訳は到底受け入れられるものではありません。 実は、主任部長のパワハラ行為については2022年から2023年にかけて3回も機構に公益通報が寄せられていたことが明らかになっています。組織としてのパワハラ体質が疑われる事態であり、今後の対応が注目されます。
再発防止へ 組織の責任問われる
今回の事件は、医療現場における深刻なパワハラ問題を改めて浮き彫りにしました。大阪母子医療センターは、再発防止に向けた具体的な対策を講じるとともに、組織としての責任を明確にする必要があります。 患者の命を預かる医療現場において、このようなパワハラ行為は断じて許されるべきではありません。私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、より良い医療環境の実現に向けて声を上げていくことが重要です。