日本では当たり前の「おひとりさま」文化。ラーメン店の一人席を例に、その歴史と進化、そして韓国との違いを紐解いていきます。
ラーメンと「おひとりさま」の密接な関係
2000年代初頭、初めて日本のラーメン店に入った時の衝撃は今でも忘れられません。まるで劇場のように整然と並んだ一人席。仕切り板で区切られたパーソナルスペースは、韓国では見慣れない光景でした。当時の韓国では、一人で食事をすることは少数派。お店によっては冷たい視線を浴びることも珍しくありませんでした。だからこそ、気兼ねなくラーメンを味わえる日本の文化に感動したのを覚えています。
ラーメン店のカウンター席
韓国で高まる「おひとりさま」志向、でも…
近年、韓国でも「ひとり飯」「ひとり酒」「ひとり旅」を楽しむ「おひとりさま」がブームになりつつあります。コロナ禍の影響もあり、一人で行動する人が増えているようです。しかし、韓国社会の基本は依然として「みんなで一緒に」。テレビ番組などを見ても、一人で過ごす人でも結局は友人と連絡を取り合い、一緒に食事や旅行へ出かける様子が描かれています。まるで「誰かと一緒にいること」が前提のようです。韓国の「おひとりさま」は、常に「一緒に」を求められる社会への反動なのかもしれません。
日本と韓国のランチ事情:一人で、それともみんなで?
日韓両方で会社勤めを経験した私にとって、ランチタイムの雰囲気の違いは印象的でした。韓国では、部署の同僚とランチに行くのが一般的。「今日は何食べようか?」という会話が当たり前のように交わされます。
一方、日本では一人でランチを済ませる人が多い印象です。「食事に行ってきます」と一言告げて、各自好きなものを食べに行きます。もちろん同僚とランチに行くこともありますが、それは事前に誘い合った場合。日本では「一緒に食事をする」ことが前提ではないのです。だからこそ、各自が食べた分だけ支払う「割り勘」文化も自然と根付いたのでしょう。
変化する「おひとりさま」の形
一人でも快適に過ごせる空間を提供する日本のラーメン店。それは、日本の「おひとりさま」文化を象徴する存在と言えるでしょう。そして今、その文化は進化を続けています。多様なニーズに応えるため、様々なスタイルのラーメン店が登場しています。一人でじっくり味わうも良し、友人と賑やかに楽しむも良し。ラーメンを通して、日本の「食」文化の奥深さを改めて感じます。
日本のフードジャーナリスト、山田太郎氏(仮名)は、「日本のラーメン文化は、個人の尊重と多様性の受容を体現している」と指摘しています。一人でも、誰かと一緒でも、自由に食事を楽しめる環境こそが、日本の魅力の一つと言えるでしょう。