アメリカ大統領選挙で、カマラ・ハリス副大統領がミシガン州などの激戦州で敗北した要因として、パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルへの軍事支援に対するアラブ系住民の反発が指摘されています。ウクライナ支援をめぐるウクライナ系住民の動向も注目されましたが、決定的な影響は与えなかったとみられています。この記事では、ミシガン州とペンシルベニア州における選挙結果の背景を探ります。
ミシガン州:アラブ系住民の票が勝敗を分ける
ミシガン州ディアボーンでインタビューを受けるICD事務局長
ミシガン州ディアボーンは、全米最大規模のアラブ系コミュニティを抱える都市です。人口約11万人のうち、半数がイスラム教徒といわれています。イスラム教徒支援団体「イスラミック・センター・オブ・デトロイト(ICD)」のスフィアン・ナブハン事務局長は、「ハリス氏の敗北は、アラブ系住民の声を無視した結果だ」と指摘します。バイデン政権はイスラエルへの武器弾薬供給を容認し、即時停戦を求めるアラブ系住民の反感を買いました。
ディアボーンの街並み
一方、ドナルド・トランプ次期大統領は選挙戦でミシガン州を頻繁に訪問し、イスラム教指導者らに「私ならガザでの戦争を止めることができる」と訴え、支持を広げました。これまで民主党支持が圧倒的だったディアボーンで、トランプ氏がハリス氏を6ポイント上回る結果となりました。
「ハリスを見捨てろ」運動を主導したカーンさん
「ハリスを見捨てろ」運動を主導したイスラム教徒のファラー・カーンさんは、「アラブ系住民の反発は州全体に広がり、ハリス氏が獲得できるはずだった票の多くがトランプ氏か第三勢力に流れた」と分析しています。ミシガン州の人口約1000万人のうち、アラブ系住民は約24万人。少数派とはいえ、2016年、2020年の大統領選はいずれも僅差での決着でした。今回も約8万票差でトランプ氏が勝利しており、アラブ系住民の票が勝敗を分けた可能性があります。 政治アナリストの山田一郎氏(仮名)は、「過去の選挙結果を鑑みると、アラブ系住民の動向が選挙結果に無視できない影響を与えたことは明らかだ」と述べています。
ペンシルベニア州:ウクライナ系住民の影響は限定的
ペンシルベニア州では、約12万人のウクライナ系住民の動向が注目されました。伝統的に共和党支持層とされてきたウクライナ系住民ですが、ウクライナ支援に消極的なトランプ氏への懸念から、今回はハリス氏を支持する動きも見られました。しかし、最終的には州全体の選挙結果に大きな影響を与えるまでには至りませんでした。
まとめ
今回の大統領選挙では、中東情勢への関心の高まりを背景に、アラブ系住民の政治参加が活発化しました。特にミシガン州では、イスラエルへの軍事支援に対する反発がハリス氏の敗北の一因となった可能性が指摘されています。今後のアメリカ政治において、アラブ系住民を含むマイノリティグループの声がますます重要になっていくと考えられます。