ワクチン後遺症と闘う42歳女性:元看護師が掴んだ希望のパラクライミング

新型コロナウイルスワクチンの接種後、後遺症に苦しむ人々の存在が社会問題となっています。この記事では、5回目のワクチン接種後に後遺症を発症し、車いす生活を余儀なくされた元看護師の倉田麻比子さん(42歳)の闘病生活と、パラクライミングを通して希望を見出す姿をご紹介します。

ワクチン接種後、突然の異変

奈良県で夫と二人の娘と暮らす倉田さんは、かつては看護師として活躍し、休日は家族とボルダリングを楽しむ活発な女性でした。しかし、2023年1月、医療従事者として5回目のワクチン接種を受けた直後、高熱に倒れ、目覚めると手足に麻痺が残っていました。

倉田さんが片手で料理をしている様子倉田さんが片手で料理をしている様子

「左手しか使えないんです。重たいものは持てません」と語る倉田さん。日常生活は一変し、食事の準備や片付けも家族の助けが必要です。「子供たちが『ご飯作るよ』と言ってくれたり、夫や長女が片付けてくれたり、家族で分担しています」と、現状を懸命に受け止めようとする姿が印象的です。

長い闘病生活と救済認定

突然の麻痺に襲われた倉田さんは、病院を転々とするも「原因不明」「異常なし」と診断され、途方に暮れました。ワクチンの後遺症であることを証明するために国の「予防接種健康被害救済制度」に申請し、1年以上もの歳月を経て、ようやく認定を受けました。

「救済認定を受けてホッとしました。家族や支えてくれた人たちが嘘つきじゃないと証明できたんです」と安堵の表情を見せる倉田さん。しかし、闘病生活は今も続いています。倦怠感、頭痛、めまいなどの症状にも悩まされ、「元の自分に戻りたい」という強い願いを持ち続けています。

パラクライミングとの出会い

家族の支えを受けながら治療に励む倉田さんは、2024年の夏、パラクライミングに出会いました。手足や視覚に障害を持つ人が挑戦するこのスポーツに、新たな希望を見出したのです。

「できないと思っていたことが多かったけれど、『こうやったらできる』と思考が変わりました」と語る倉田さん。脚を手で持ち上げ、工夫しながら壁を登る姿は、力強く、そして美しい。

パラクライミングに挑戦する倉田さんパラクライミングに挑戦する倉田さん

パラクライミングを通して、身体的な機能回復だけでなく、精神的な支えも得ている倉田さん。「元の自分に戻りたい」という目標に向かって、一歩ずつ前進しています。

後遺症の現状と向き合う

新型コロナウイルスワクチン接種後の後遺症は、未だ多くの謎に包まれています。倉田さんのように、日常生活に支障をきたすほどの重篤な後遺症に苦しむ人々も少なくありません。 厚生労働省の発表によると、ワクチン後遺症の救済認定件数は増加傾向にあり、社会全体でこの問題に向き合っていく必要があります。

希望を胸に、未来へ

倉田さんの闘病生活は、ワクチン後遺症の深刻さを改めて私たちに突きつけます。しかし同時に、パラクライミングを通して希望を見出し、前向きに生きる彼女の姿は、多くの人々に勇気を与えてくれるでしょう。困難な状況の中でも、諦めずに未来を切り開こうとする倉田さんの挑戦は、これからも続きます。