中国ホテルで日本人宿泊拒否騒動:愛国心か、行き過ぎた反日感情か?

中国雲南省のホテルで日本人宿泊客の受け入れを拒否する事件が発生し、その様子を捉えた動画がSNSで拡散、大きな波紋を呼んでいます。本記事では、この騒動の背景や中国国内の反応、そして今後の日中関係への影響について掘り下げていきます。

宿泊拒否の瞬間:動画が拡散、賛否両論の声

11月6日、中国人女性が日本人と共に雲南省騰衝市のホテルにチェックインしようとしたところ、ホテル従業員に宿泊を拒否されました。この一部始終を撮影した動画がSNSで拡散され、中国国内で大きな議論を巻き起こしています。動画内では、女性がホテルのホームページに記載されている「国籍を問わず宿泊可能」という記述を示して抗議する様子が映し出されています。しかし、従業員は「当ホテルは日本人の宿泊をお断りしています」と繰り返すのみでした。

ホテル従業員が日本人宿泊客を拒否する様子を捉えた動画がSNSで拡散ホテル従業員が日本人宿泊客を拒否する様子を捉えた動画がSNSで拡散

この騒動を受け、ホテル前には従業員の対応を称賛する花束や花輪が届けられる一方、SNS上では賛否両論の意見が飛び交っています。「愛国的な行動だ」「日本を拒否しよう」といった過激な反日コメントが目立つ一方で、「ヘイト教育とプロパガンダの弊害だ」「なぜこんなにも愚かなのか」といった批判的な声も少なくありません。

騰衝市:日中戦争の爪痕が残る土地

今回の事件の舞台となった騰衝市は、日中戦争において激戦地となった場所として知られています。こうした歴史的背景が、一部の市民の強い反日感情に影響を与えている可能性も指摘されています。歴史認識の問題は日中関係において常にデリケートなテーマであり、今回の騒動もその複雑さを改めて浮き彫りにしました。

日中戦争時の騰衝市の様子。歴史的背景が今回の騒動に影響を与えている可能性も日中戦争時の騰衝市の様子。歴史的背景が今回の騒動に影響を与えている可能性も

専門家の見解:ナショナリズムの高まりが背景に

東京財団政策研究所の柯隆主席研究員は、この騒動について「中国社会全体に漂うナショナリズムの空気に火が付いた」と分析しています。動画がSNSで拡散され、愛国主義的な若者層を中心に大きな反響を呼んだことが、事態を拡大させた要因の一つと考えられます。

ホテル側の対応:矛盾と沈黙

フジテレビ国際取材班がホテルに取材を試みたところ、「香港・台湾・マカオの方しか宿泊できません」という回答が得られました。しかし、中国政府は2024年7月に「外国人の宿泊を拒んではいけない」という通知を出しており、ホテル側の説明は矛盾しています。さらに、一部の予約サイトでは「日本人は宿泊できない」と明記されていることも判明しました。政府の通知を無視したホテル側の対応は、今後の日中関係に更なる影を落とす可能性も懸念されます。

ホテルの予約サイトには「日本人は宿泊できない」と明記されているホテルの予約サイトには「日本人は宿泊できない」と明記されている

今後の日中関係への影響は?

今回の騒動は、日中間の歴史認識やナショナリズムの問題が依然として根深いことを示す事例と言えるでしょう。今後の日中関係において、両国が冷静な対話と相互理解を深めていくことが、より一層重要となるのではないでしょうか。