パレスチナ自治区ガザ南部の廃虚に、イスラエルのネタニヤフ政権が「人道都市」を建設し、ガザ全住民の収容を目指す計画に着手した。世界有数の人口過密地域であるガザの住民をさらに狭い空間に集約するこの計画に対し、「強制収容所も同然」「民族浄化」といった激しい非難が噴出している。特にエジプト国境付近への建設が見込まれており、将来的な住民追放の狙いを危惧する声も上がっている。
計画の詳細
カッツ国防相は2月7日、軍に計画を進めるよう指示した。当初はガザ南部の避難民ら約60万人を収容し、いずれはガザ全住民を移住させるとしている。候補地としてはガザ最南部ラファが浮上している模様だ。ガザの面積は約365平方キロで、福岡市と同程度。2023年にイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの戦闘が始まる前には、推定220万人がガザに居住していた。
ガザ地区南部ラファの避難民キャンプ(写真)
安全対策と移動制限
カッツ氏の説明によると、イスラエル軍兵士が「人道都市」の周囲を封鎖し、審査でハマスの構成員ではないことが確認された住民を収容する方針だ。一度この「人道都市」に入った住民は、外国に移住する場合を除き、離れることは認められないという。
計画の背景とタイミング
イスラエルとハマスは、現在60日間の停戦案について交渉中とされる。この停戦合意後、「人道都市」の建設が開始されるとみられているが、交渉の行方を待たずに計画自体が国際的な注目を浴びている状況だ。
広がる非難の声
イスラエルの「ガザ人道都市」計画に対し、国際社会からは強い非難が上がっている。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリニ事務局長は、「事実上、巨大な強制収容所の建設だ」と厳しく非難した。国連は、占領地からの民間人の追放や強制移住は国際人道法で禁止されており、「民族浄化に等しい」との批判を強めている。
イスラエルのオルメルト元首相も、英紙ガーディアンのインタビュー(電子版、2月13日掲載)で、「これは強制収容所だ」と指摘。「(住民を)保護するのではなく、(ガザから)追放するのが狙いだと理解するほかない」と述べ、ネタニヤフ政権の意図を非難した。
長期的な影響の可能性
米国ではトランプ前大統領が2024年2月、パレスチナ住民をガザから第三国へ移住させる構想を打ち出した経緯があり、現在、米国とイスラエルがその協力国を探している状況にある。
ガザの住民の約7割は、1948年のイスラエル建国前後にユダヤ人勢力からの襲撃を逃れて難民となったパレスチナ人の子孫である。アラブ世界ではこの出来事は「ナクバ(大惨事)」として語り継がれており、今回のイスラエルの計画が「第2のナクバ」につながるのではないかとの深刻な懸念が表明されている。
イスラエル軍の作戦により破壊されたガザ地区南部の建物(写真)
結論
イスラエルが進めるガザ全住民を特定の狭い区域に収容する「人道都市」計画は、その実態と目的について国内外から深刻な疑念と激しい非難にさらされている。「強制収容所」や「民族浄化」とまで称されるこの計画は、国際人道法の原則に反する可能性が指摘されており、ガザ住民の未来、そしてパレスチナ難民問題の歴史的文脈において、極めて重大な意味合いを持つものとして注視されている。
参照元:https://news.yahoo.co.jp/articles/97b0a0fed65dca01f41af26a5e4c9f9e032dec7d