メルケル前首相が16年間の首相在任期間を含む半生を振り返った回顧録がついに出版されました。700ページを超える大作「自由」には、世界を揺るがした数々の出来事の裏側、そして彼女の揺るぎない信念が綴られています。国際協調を重んじるメルケル氏にとって、アメリカ第一主義を掲げるトランプ前大統領との関係は大きな試練だったようです。回顧録では、トランプ氏との初対面で握手を拒否されたエピソードや、国際関係を不動産ビジネスのように捉える姿勢に驚きと戸惑いを隠せない様子が赤裸々に描かれています。
トランプ氏との確執:握手拒否から19秒の握手まで
メルケル氏は、トランプ氏との初会談で握手を求められたにも関わらず、無視されたという衝撃的なエピソードを明かしています。一方で、当時の安倍晋三首相とは19秒も握手を交わしたと振り返り、その対比に複雑な感情を抱いていたことが伺えます。回顧録によれば、メルケル氏はトランプ氏が「ロシアのプーチン大統領に非常に魅了されている」と感じており、国際協調への期待は薄かったようです。
メルケル氏(中央左)とトランプ氏(右)、安倍首相(中央右)
ローマ教皇への相談:異なる意見との向き合い方
アメリカとドイツの関係は、NATOの防衛費負担や貿易摩擦などで冷え込んでいました。トランプ氏との対応に苦慮していたメルケル氏は、なんとフランシスコ・ローマ教皇に「根本的に異なる意見」への向き合い方を相談したという驚きの事実も明かされています。政治家としての手腕だけでなく、人間としての苦悩も垣間見えるエピソードです。
ロシアへの融和政策とウクライナ侵攻:メルケル氏の真意とは
メルケル氏のロシアへの融和政策は、後のウクライナ侵攻を招いたという批判も受けています。2008年のNATO首脳会議でウクライナの加盟に反対したことに対しては、ゼレンスキー大統領から名指しで非難されました。しかし、メルケル氏はプーチン大統領がウクライナのNATO加盟を黙認するはずがないと反論し、当時の判断を正当化しています。
メルケル氏の回顧録「自由」:日本語版も刊行予定
「欧州の盟主」と称されたメルケル氏。退任後は沈黙を守っていましたが、この回顧録は彼女の政治家人生だけでなく、激動の時代を生き抜いた一人の女性としての等身大の姿を映し出しています。日本語版も刊行予定とのことですので、ぜひ手に取って読んでみてください。
「国際政治の裏側」、「メルケル元首相の苦悩」、「トランプ大統領との確執」、「プーチン大統領との関係」、「ウクライナ侵攻の背景」といったキーワードに興味のある方は、この回顧録から多くの学びを得られるはずです。 国際情勢の理解を深める上で、貴重な資料となるでしょう。