ウクライナ軍がロシア領内クルスク州への越境攻撃で一時的に制圧した地域の一部を、ロシア軍に奪還されていることが明らかになりました。今後の戦況悪化が懸念される中、ウクライナ側の苦しい状況が浮き彫りとなっています。
ロシア軍の反撃とウクライナ軍の苦境
ロイター通信によると、ウクライナ軍参謀本部関係者は、8月の越境攻撃開始以降、クルスク州で最大約1376平方キロメートルを制圧したものの、ロシア軍の反撃により現在は約800平方キロメートルまで縮小したと明らかにしました。これは制圧地域の約40%に相当します。ウクライナ側は「軍事的に妥当性がある限りは守り続ける」と主張していますが、ロシア軍の攻勢は激化しており、予断を許さない状況です。
ウクライナ東部ドニプロの住宅で活動する救急隊
ウクライナ軍の兵力不足は深刻な問題となっており、戦況を覆すには、アメリカとイギリスから供与された長距離ミサイル「ATACMS」と「ストームシャドー」の数が不足しているとの指摘もあります。これらのミサイルはロシア領内への攻撃を可能にするものの、現状では戦況を大きく変えるほどの効果を発揮できていないのが現状です。
ゼレンスキー大統領の危機感とロシア軍の増援
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は23日の国際会議で、「プーチン大統領は1月20日までに我々をクルスク州から追い出そうとしている」と発言し、ロシア軍の攻勢強化への危機感を露わにしました。これは、停戦実現に前向きとされるアメリカのトランプ次期大統領の就任前に、ロシアが更なる攻撃を仕掛けてくる可能性を示唆しています。
ウクライナ東部ドニプロの住宅で活動する救急隊
さらに、ロイター通信によると、ロシア軍の増援としてクルスク州に派遣された北朝鮮兵約1万1000人の大部分が訓練の最終段階にあり、近く本格的な戦闘に投入される可能性があるとのことです。ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州クラホベ方面でも激しい戦闘を繰り広げており、戦況はますます緊迫しています。
ウクライナ紛争の今後の展望
ウクライナ紛争の長期化が懸念される中、クルスク州におけるウクライナ軍の苦戦は、今後の戦況を大きく左右する可能性があります。ロシア軍の攻勢が続く限り、ウクライナ側の苦境はさらに深まることが予想されます。今後の和平交渉の行方にも大きな影響を与える可能性があり、国際社会の動向が注目されます。