ロシアがウクライナ攻撃で使用した新型ミサイル「オレシュニク」。プーチン大統領はこれを「極超音速で飛ぶ新型のMRBM(準中距離弾道ミサイル)」と称していますが、その実態には謎が多く、世界中の軍事専門家たちの注目を集めています。この記事では、オレシュニクの性能、そしてそれが持つ戦略的意味合いについて、分かりやすく解説します。
オレシュニク:謎に包まれた新型ミサイル
プーチン大統領自身による説明では、オレシュニクは最高速度マッハ10を誇る極超音速ミサイルであり、実験段階の中距離弾道ミサイルとのこと。しかし、米国防総省の見解は異なり、IRBM(中距離弾道ミサイル)であるRS-26ルベジをベースに開発されたものだと分析しています。
altウクライナ攻撃で複数の弾頭が着弾した様子 (出典:FNNプライムオンライン)
この食い違いはどこから来るのでしょうか?実は、RS-26ルベジ自体が特異なミサイルなのです。ICBM(大陸間弾道ミサイル)でありながら、射程を調整することでMRBMとしても運用可能な設計となっています。これは、かつて米ソ間で締結されたINF条約(中距離核戦力全廃条約)の制限を巧みに回避するための工夫だったと見られています。
INF条約とロシアのミサイル戦略
INF条約は、射程500km~5500kmの弾道ミサイルと巡航ミサイルの開発、保有、配備を全面的に禁止するものでした。しかし、ロシアはRS-26ルベジのような「境界線上のミサイル」を開発することで、条約の精神をないがしろにしようとしたのではないか、という疑念が持たれています。
軍事アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「RS-26は、ICBMとしての最低限の射程を満たしつつ、MRBMとしても運用できる柔軟性を持つ。これは、INF条約の制限下で、可能な限り幅広い軍事オプションを確保しようとするロシアの戦略の表れと言えるだろう」と指摘しています。
オレシュニクの軍事的な意味合い
オレシュニクの登場は、ロシアのミサイル開発における新たな段階を示唆しています。極超音速兵器は、その速度と軌道変化能力から、既存のミサイル防衛システムでは迎撃が困難とされています。もし、オレシュニクが本当にマッハ10で飛行する極超音速ミサイルであるならば、周辺国にとって大きな脅威となるでしょう。
さらに、米軍事情報専門サイトTWZの情報によれば、ロシアはオレシュニクのような実験的なミサイルを少数しか保有していない可能性が指摘されています。これは、実戦でのデータ収集を目的とした実験的運用である可能性を示唆しています。
今後の展望
オレシュニクの登場は、国際的な軍備管理の議論に新たな波紋を投げかけています。今後、ロシアがこのミサイルをどのように運用していくのか、そして国際社会がどのように対応していくのか、注視していく必要があります。
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