元経済産業省官僚で慶応大学大学院教授の岸博幸氏(62)が、27日放送のTBS系「サンデージャポン」に出演し、参院選での落選経験を通して見えた自民党の深刻な「組織ガバナンス」の欠如について詳細を語りました。党内から改革を訴えるべく比例代表で出馬しながらも、一貫して自民党への批判を展開した異例の選挙戦の内幕と、その結果として見えた党の現状に注目が集まっています。
参院選落選と有権者の生の声
岸氏は自民党の公認を得て参院選に挑みましたが、議席を獲得することはできませんでした。番組MCの爆笑問題・田中裕二氏からジョーク交じりに労いの言葉をかけられると、「疲れました」と本音を漏らしました。
選挙戦を通じて、岸氏は有権者の多様な声に直面したと言います。全国各地で自民党支持者や党員からは「自民党を立て直してほしい」「石破氏は辞めるべきだ」といった党改革への強い期待が聞かれました。しかし、それ以上に多かったのは「自民党はもう見限った」「自民党再生などどうでもいい」と、既に自民党に背を向けた人々の声であったと明かし、国民の党に対する厳しい視線を肌で感じたことを強調しました。
元経産官僚で慶大大学院教授の岸博幸氏が、テレビ番組で自民党の内部事情を語る様子。
自民党内に潜む「組織ガバナンス」の欠如
党内に入って初めて明らかになったのは、自民党の組織としての機能不全でした。岸氏は「残念ながら、石破氏だけの問題ではなく、自民党は組織の体をなしていない」と指摘し、その背景にある「組織ガバナンス」の欠如を問題視しました。
具体例として挙げたのは、党が掲げていた消費減税への反対方針を巡るオペレーションの混乱です。ある幹部から「消費税減税は間違っていると、どんどん広めてほしい」と依頼された際、岸氏は自身の持論と合致することからこれに応じました。しかし、候補者一人の発言では影響力に限界があると考え、「総理や他の幹部も分かりやすいロジックでこれを広め、その代替策も示すべきだ」と求めたにもかかわらず、党全体での徹底は全く見られなかったと言います。
消費減税を巡る「党のブレ」の露呈
さらに驚くべきは、選挙戦終盤に差し掛かり、情勢が不利になると党の方針が突如として揺らぎ始めたことです。岸氏は「なぜか減税もやるとか、ブレまくる」と述べ、これが自民党の組織としてのガバナンスが機能していない典型例であると暴露しました。一貫性のない政策メッセージは、有権者の不信感を募らせ、党の信頼性を大きく損なう結果を招いたと分析できます。
落選を語る岸氏の「外からの改革」への示唆
爆笑問題・太田光氏からの「当選しなくて良かったと思っていますか」という率直な質問に対し、岸氏は「どっちでも良かった」と率直な気持ちを述べました。そして、「当選していなかったらしていなかったで、外からやりようがあるから、いろいろやります」と、落選が今後の活動に影響しないことを示唆しました。
特に印象的だったのは、「内側から1年生でやるには、限界があったなと思います。その意味では落ちて良かったかもしれない」という発言です。これは、自民党が抱える根深い組織問題を改革するためには、内部からのアプローチだけでは困難であり、むしろ外部からの視点や圧力が不可欠であるという、岸氏自身の強いメッセージと受け取れます。
まとめ
岸博幸氏の参院選体験は、自民党が直面している「組織ガバナンス」の危機を浮き彫りにしました。有権者や党員からの不満、政策の一貫性の欠如、そして内部からの改革の難しさという課題は、今後の日本政治において自民党がどのようにこれらの問題に対処していくかが問われることを示唆しています。岸氏の視点は、党再生に向けた議論を深める上で重要な一石を投じるものとなるでしょう。
出典:Yahoo!ニュース