日本では「解雇しにくい国」という認識と「国際的に見ると厳しくない」という意見が対立しています。OECDの調査結果などを根拠に、日本の解雇規制は厳しくないとする主張もありますが、実際には複雑で不透明な制度が問題となっています。この記事では、日本の解雇規制の実態と、それが非正規雇用に与える影響について解説します。
正社員の安定性とは? 意外な落とし穴
民法第627条では、雇用期間が定められていない場合、どちらの当事者も2週間前に申し出れば雇用契約を終了できるとされています。つまり、正社員であっても会社側は2週間前に申し出れば解雇できることになります。
正社員のイメージ写真
しかし、実際には「解雇権濫用法理」という考え方が適用され、解雇の理由が客観的に合理的でなく、社会通念上相当でないと認められた場合は無効となります。この規定は労働契約法第16条にも明文化されています。
解雇の判断は裁判次第? 企業と労働者のジレンマ
問題なのは、法律の条文が抽象的なため、解雇が無効かどうかは裁判で判断されるということです。 裁判には時間と費用がかかるため、不当解雇されても泣き寝入りする労働者も少なくありません。特に、組合もなく、裁判に訴える資力のない中小企業の労働者は、泣き寝入りを強いられるケースが多いのが現状です。
企業側にとっても、「裁判にならないと分からない」という不透明さは大きなリスクとなります。このため、解雇リスクの低い非正規社員を雇用する傾向が強まります。さらに、正社員を整理解雇する場合、非正規社員の解雇を先行させないと解雇権濫用とみなされる可能性があるため、企業は正社員よりも非正規社員を雇用するインセンティブが生まれます。
労働経済学の専門家である、架空の山田教授は次のように述べています。「日本の解雇規制は、正社員には過度に厳しく、非正規社員には過度に緩いという矛盾を抱えています。この歪みが、非正規雇用の増加につながっていると言えるでしょう。」
解雇規制の矛盾:正社員の過剰保護と非正規社員の不安定さ
結果として、日本の解雇規制は正社員を過剰に保護する一方で、非正規社員の雇用を不安定なものにしています。皮肉なことに、非正規社員を大量に生み出しているのは、正社員を守るための「解雇規制」そのものと言えるでしょう。この問題を解決するためには、解雇規制のあり方を見直し、より公正で透明性の高い制度を構築していく必要があります。より明確な基準を設けることで、企業も労働者も安心して雇用契約を結ぶことができるようになり、日本経済の活性化にも繋がるのではないでしょうか。