トランプ次期米大統領は主要な閣僚人事を終えたが、米メディアで「最もトランプ氏に近い人物」とされるのがナタリー・ハープ氏(33)だ。トランプ氏に付き添い、最新の情報を耳に入れる役割を担っており、持ち運び可能な小型のプリンターを携帯していることから「人間プリンター」の異名を持つ。ホワイトハウスでも同様の役割を担うとみられ、情報の「門番」として注目されている。
米メディアによると、ハープ氏は西部カリフォルニア州の保守的な家庭で育ち、キリスト教保守派の子弟らが集まるリバティー大学を卒業した。2018年に当時大統領だったトランプ氏が署名した法律によって、がん治療の選択肢が広がり、骨がんだったハープ氏も治療に成功。保守系のケーブルテレビ局に出演したのをきっかけにトランプ氏の目に留まった。
20年大統領選の選挙運動を手伝った後、保守系のケーブルテレビ局の司会者を経て、今回の大統領選で陣営入りした。ソーシャルメディアやニュースをチェックし、必要な情報を印刷しトランプ氏に見せる役割を担っており、携帯プリンターや紙、予備バッテリーが入ったバッグを持ち歩いている。選挙の不正や共和党内の政敵などトランプ氏が好む情報を頻繁に伝え、トランプ氏のソーシャルメディアへの投稿も手伝っているという。
次期政権での肩書はないが、ホワイトハウスでは大統領執務室(オーバルオフィス)のすぐ外に席を用意される見通しだ。トランプ氏からは「スイーティー」と呼ばれ、娘のように可愛がられている。ハープ氏は23年にはトランプ氏に「あなたは私にとっての全てだ」「あなたを絶対にがっかりさせたくない」「私の人生の守護者」と手紙で伝えたという。
トランプ氏は第1次政権で、反目した閣僚らを次々と罷免した。閣僚にはトランプ氏の政策の「忠実な実行者」としての役割が求められ、次期政権でも最も重要なのはトランプ氏自身の考えだ。情報の取捨選択によってトランプ氏に影響力を行使できる点では、ハープ氏は閣僚並みに重要な側近として注目されている。【ワシントン秋山信一】