ウクライナ東部ドニプロへの攻撃で、ロシアが新型中距離弾道ミサイル「オレシュニク」(ロシア語でハシバミの木の意) を初めて実戦投入しました。プーチン大統領は「迎撃不可能」と豪語していますが、その実態はどうなのでしょうか? 被害は限定的だったものの、軍事専門家の間では、その技術的特徴とロシアの真の狙いについて様々な憶測が飛び交っています。
ドニプロ攻撃を分析:見えてきたオレシュニクの性能
現場に残されたミサイルの残骸を分析した専門家たちは、複数の弾頭が目標地域に落下したことを確認しました。これは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に多く見られる特徴です。ミドルベリー国際大学ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのジェフリー・ルイス氏によると、残骸から弾頭容器の一部、誘導装置、燃料タンクなどが確認できたとのこと。
オレシュニクの残骸
ルイス氏は、この弾頭容器は複数の独立目標再突入体(MIRV)を搭載可能で、それぞれが異なる標的を攻撃できると指摘します。 発射後、宇宙空間で弾頭容器が回転し、複数の弾頭を異なる場所に投下する仕組みです。ドニプロ攻撃では、6個の弾頭がそれぞれさらに6個の小型弾頭を運び、計36発の小型弾頭が目標地域に散布された可能性があるといいます。
オレシュニクの射程と速度:極超音速ミサイルの実態
戦略国際問題研究所(CSIS)によると、オレシュニクは核弾頭搭載可能なRS-26中距離弾道ミサイルをベースに開発されたとされています。ルイス氏は、RS-26からブースターを1段階減らし、射程を短縮した可能性が高いと分析しています。
プーチン大統領はオレシュニクを「迎撃不可能な極超音速ミサイル」と主張していますが、専門家は、この射程の弾道ミサイルはすべて極超音速であり、イスラエルや米国の迎撃ミサイルで迎撃可能だと反論しています。秒速3.5キロメートルという速度も、ICBMの最大射程時の速度の半分程度に過ぎないと指摘されています。
ロシアの真の狙い:心理戦としてのミサイル攻撃
ウクライナ政府高官によると、ドニプロで使用されたオレシュニクには爆発物が搭載されておらず、被害は軽微だったとのこと。しかし、ルイス氏は再突入時の速度だけでも被害をもたらすのに十分だと述べています。
ドニプロの被害状況
プーチン大統領は、オレシュニクの使用はウクライナによるロシア本土攻撃への報復だと主張し、紛争の世界的拡大への懸念を示唆しました。
ルイス氏は、ロシアによるオレシュニクの使用は、軍事的な効果よりも心理的な効果を狙ったものだと分析しています。プーチン大統領は、ミサイルを使用するだけでなく、記者会見を開いてその「恐ろしさ」を強調することで、心理的な圧力をかけることを意図している可能性があります。
今後の展望:オレシュニクとウクライナ紛争の行方
オレシュニクの登場は、ウクライナ紛争の新たな局面を示唆しています。ロシアの真の狙い、そして今後の紛争の行方に、世界中の注目が集まっています。