中国共産党中央軍事委員会委員である苗華氏が調査対象となっていることが明らかになり、習近平国家主席による軍内部の粛清がさらに拡大している様相を見せています。苗氏は習主席の側近とされ、中央軍事委員会の要職を担ってきました。今回の調査は、軍内部の権力闘争激化を示唆するものであり、中国の軍事戦略に大きな影響を与える可能性があります。
軍最高指導機関に激震、苗華氏の調査で波紋広がる
中国国防省の呉謙報道官は、苗華中央軍事委員会委員が「重大な規律違反の疑い」で調査対象となっていることを発表しました。具体的な容疑内容は明らかになっていませんが、昨年から続く軍高官の汚職摘発の一環とみられています。苗氏は14歳で入隊し、習主席と同時期に福建省で勤務した経験を持つ、いわゆる「習近平派」の幹部。中央軍事委員会の政治工作部主任として、人事や組織管理など大きな権限を握っていました。
中国中央軍事委員会の苗華委員=2019年10月、平壌(AFP時事)
権力闘争激化か、軍内部の緊張高まる
苗氏の失脚は、軍内部の権力闘争の激化を示唆するものとして注目を集めています。海軍力強化を進める習主席の意向を受け、陸軍出身でありながら海軍政治委員に就任した苗氏は、陸軍関係者からの反発を買っていた可能性も指摘されています。軍事専門家の中には、「軍内部の主導権争いが苗氏の失脚につながった」と分析する声もあります。
汚職摘発の嵐、軍指導部の混乱続く
今回の調査は、李尚福前国防相、魏鳳和元国防相など、既に複数の軍高官が摘発されている中で行われました。中央軍事委員会は7人で構成されていますが、事実上2人が欠員状態となっており、異例の事態となっています。後任の国防相である董軍氏は中央軍事委入りしておらず、一部メディアでは董氏も調査対象になっているとの報道も出ています。これらの動きは、軍指導部の混乱を深め、中国の軍事戦略に影を落とす可能性があります。
台湾統一への影響は? 軍再編に暗雲
習近平指導部は、武力による台湾統一の可能性を排除しておらず、軍の統合作戦能力の向上を最重要課題としています。しかし、軍高官への相次ぐ汚職摘発は、軍の士気を低下させ、軍再編の進展を阻害する恐れがあります。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、「軍再編の推進に影響しかねない」と懸念を示しています。今後の中国軍の動向、そして台湾情勢への影響に注目が集まっています。
軍内部の動揺、中国の安全保障政策に不透明感
中国軍内部の粛清は、単なる汚職摘発にとどまらず、習近平体制における権力基盤の強化を目的とした権力闘争の側面も持っているとみられています。 この不安定な状況は、中国の安全保障政策に不透明感を生じさせ、周辺国との緊張を高める可能性も懸念されています。今後の中国の政治・軍事動向から目が離せません。