ロシアと南カフカス地方の旧ソ連構成国、アゼルバイジャンの関係がにわかに緊迫している。発端は6月下旬、露中部エカテリンブルクで過去に起きた殺人事件などを巡って露治安当局が拘束活動を行った際、アゼルバイジャン人の容疑者2人が死亡したことだ。アゼルバイジャンは「2人を殺害した」とロシアを非難。首都バクーでも露国営メディア関係者を拘束するなど、事実上の報復に乗り出した。
両国は伝統的な友好国だが、アゼルバイジャンは昨年12月に起きた同国旅客機の墜落を巡り、「露軍の防空システムの誤射」が原因だとしてロシアに謝罪を要求。しかし、ロシアは「調査完了を待つ」との姿勢を崩さず、両国関係には陰りが生じた。アゼルバイジャンは近年、トルコと関係を強化するなどロシアから距離を置くような動きも見せている。今回の問題はこうした中で起きており、事態の推移次第ではロシアとアゼルバイジャンの疎遠化が加速する可能性もある。
露メディアによると、露治安当局は先月27日、2000年~10年代に起きた複数の殺人・殺人未遂事件を巡って大規模な家宅捜索を行い、アゼルバイジャン人約50人を拘束。その際、主犯格の疑いがある兄弟2人が死亡した。当局は1人が心不全で死亡し、もう1人の死因は調査中だとした。
これを受け、アゼルバイジャン政府は28日、拘束活動中に「許しがたい暴力」を振るったとしてロシアを非難する声明を発表。予定されていたアゼルバイジャン議員団の訪露や両国の友好行事も全て中止した。
さらに、アゼルバイジャン捜査当局は30日、露国営メディア「スプートニク」のバクー支局を捜索し、ロシア人幹部2人を拘束。現地メディアは、2人が露諜報機関「連邦保安局(FSB)」のスパイだったと伝えた。アゼルバイジャン検察当局も7月1日、拘束活動中に兄弟2人が死亡したのは露当局による「故意の殺人」だったとし、刑事訴追手続きを開始した。
これに対し、露外務省は1日、アゼルバイジャン大使を呼び出し、同国の「非友好的行動とロシア人記者の不当拘束」に抗議した。