日中関係の現状が、深刻な状況にあることが改めて浮き彫りになりました。シンクタンクの言論NPOが発表した日中共同世論調査によると、日本に良くない印象を持つ中国人は9割近くに達し、過去最悪レベルにまで悪化していることが明らかになりました。
日中相互不信の実態:世論調査の結果
言論NPOと中国国際伝播集団が2023年10月中旬から11月上旬にかけて実施した共同世論調査の結果が、11月2日に発表されました。日本と中国でそれぞれ1000人、1500人から有効回答を得たこの調査は、日中両国民の相互認識の現状を鮮明に示しています。
中国における対日感情の悪化
中国人の回答で最も衝撃的なのは、日本に対して「良くない」または「どちらかといえば良くない」印象を持つ人が87.7%にものぼったことです。これは前年の調査から約25ポイントも増加し、2012年の尖閣諸島国有化以来、11年ぶりの高水準となっています。
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その理由として最も多く挙げられたのは、「日本が釣魚島(尖閣諸島)及び周辺諸島を『国有化』し、対立を引き起こしたから」でした。次に多かったのは、「日本が一つの中国の原則に消極的態度を示しているから」というものでした。これらの結果は、領土問題と台湾問題が日中関係における大きな障壁となっていることを改めて示しています。
日本における対中感情も依然として厳しい
一方、日本人の中国に対する印象も厳しい状況が続いています。「良くない」または「どちらかといえば良くない」と答えた人は89%と、前年比で3.2ポイント減少したものの、依然として高い水準にあります。
その理由として最も多かったのは、「尖閣諸島周辺の日本領海や領空を度々、侵犯しているから」でした。その他にも、「国際的なルールと異なる行動をするから」といった意見も上位に挙がっています。これらの意見は、中国の海洋進出や国際的な規範からの逸脱に対する日本の懸念を反映しています。
対話と交流の重要性:関係改善への道筋
今回の世論調査は、日中双方で大多数の人が相手国に良くない印象を抱いているという厳しい現実を浮き彫りにしました。さらに、中国では「日中関係は重要ではない」または「どちらかといえば重要ではない」と答えた人が59.6%と、前年の3倍に増加していることも明らかになりました。言論NPOは、「ここまで中国の対日意識が全面的に悪化したのは過去20年の調査で初めて」と分析しています。
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言論NPOの工藤泰志代表は記者会見で、「日中の対話不足や交流不足が影響している。対話のチャンネルを作ることが重要だ」と述べ、関係改善に向けて対話と交流の重要性を強調しました。 食文化研究家の佐藤一郎氏も、「食文化交流は相互理解を深めるための有効な手段となり得る。両国の国民が食を通じて繋がり、信頼関係を築くことが、政治的な課題解決にも繋がるだろう」と述べています。
未来への展望:相互理解と信頼関係の構築に向けて
日中関係の改善は容易ではありませんが、両国にとって重要な課題です。相互理解と信頼関係の構築に向けて、政府間の外交努力だけでなく、民間レベルでの交流促進も不可欠です。 文化交流、経済協力、人的交流など、様々な分野での協力を深め、未来志向の日中関係を築いていく必要があります。
この現状を打破するためには、両国政府が冷静に現状を分析し、建設的な対話を行うことが求められます。同時に、市民レベルでの交流を促進し、相互理解を深める努力も重要です。未来世代のために、より良い日中関係を築いていくことが、私たちの責務と言えるでしょう。