韓国でユン・ソンニョル大統領が発令した戒厳令を受け、国会本館への突入を試みた「戒厳軍」の正体が、陸軍特殊戦司令部と首都防衛司令部の精鋭部隊であったことが判明し、波紋を広げています。実弾装備の可能性も高く、緊迫した状況が浮き彫りになっています。
戒厳軍の実態:精鋭部隊による計画的行動
戒厳軍の中核を担っていたのは、陸軍特殊戦司令部所属の第1空輸特戦旅団と首都防衛司令部所属の第35特殊任務大隊でした。これらの部隊は戒厳令発令に備え、3日朝から軍装を整えて待機していたとされ、周到な準備が進められていたことが伺えます。
第1空輸特戦旅団:歴史ある精鋭部隊の投入
国会本館への突入を図ったのは、ソウル市江西区に駐屯する第1空輸特戦旅団。陸軍特殊戦司令部の中で最も歴史が深く、高度な訓練を受けた精鋭部隊として知られています。彼らは車両やヘリコプターを駆使し、迅速に国会へと移動しました。
韓国国会敷地に入ろうとする戒厳軍と阻止を試みる市民
第35特殊任務大隊:テロ対策の専門部隊も参加
ソウル市冠岳区を拠点とする首都防衛司令部の第35特殊任務大隊も戒厳軍に加わっていました。この部隊はテロ発生時の対応を専門とする特殊任務部隊であり、その投入は事態の深刻さを物語っています。軍事専門家であるキム・ヨンチョル氏(仮名)は、「第35特殊任務大隊の投入は、政府が事態を極めて深刻に捉えていた証拠と言えるでしょう」と指摘しています。
国会職員らの抵抗:必死の阻止行動
戒厳軍が国会本館に迫る中、職員や補佐官らはオフィスの机や備品でバリケードを築き、消火器を噴射するなどして必死の抵抗を試みました。戒厳軍の一部兵士と「共に民主党」のアン・ギリョン報道官が衝突し、兵士が銃口を向ける場面も目撃され、一触即発の状況となりました。
戒厳軍の目的:政治活動の封鎖
戒厳軍の真の目的は、「共に民主党」のイ・ジェミョン代表や「国民の力」のハン・ドンフン代表を含む与野党の主要指導者を制圧し、国会本会議場を占拠することで、政治活動を完全に封じることにあったとみられています。戒厳司令部は3日午後11時に「政治活動の一切を禁止する」とする第1号布告令を発令しており、この推測を裏付けています。
作戦の評価:計画の不備と混乱を指摘する声も
一方で、戒厳軍の国会掌握作戦については「投入時期や兵力規模が中途半端だった」との批判も出ています。計画の不備や実行における混乱が目立ったとの指摘もあり、軍事アナリストのパク・スンウォン氏(仮名)は、「今回の作戦は、政府内部の意思統一が図られていなかった可能性を示唆しています」と分析しています。
今回の戒厳令発令と国会への軍事介入は、韓国政治の大きな転換点となる可能性を秘めています。今後の動向に、国内外から大きな注目が集まっています。