統合失調症の姉と家族:20年の記録、映画『どうすればよかったか?』に込められた想い

映画『どうすればよかったか?』は、統合失調症を発症した姉とその家族を20年にわたり記録したドキュメンタリー映画です。監督である弟の藤野知明氏が、医師である両親の反対を押し切り、姉の病状と家族の葛藤をカメラに収めました。この記事では、映画の内容を追いながら、藤野監督のインタビューを通して、この作品に込められた想いを紐解いていきます。

発症の兆候と家族の反応

藤野監督が姉の異変に初めて気づいたのは1983年のことでした。ある夜、姉が突然現実離れした発言を始めたことがきっかけでした。「パパがテレビの歌番組に出ていたとき、応援しなくてごめんね」といった言葉に、家族は驚きを隠せませんでした。母親は救急車を呼びましたが、病院での診察結果は「問題なし」。両親は姉が病気のふりをしていると決めつけ、その後も続く不可解な行動を無視し続けました。

映画『どうすればよかったか?』メインビジュアル映画『どうすればよかったか?』メインビジュアル

記録の始まりと両親の沈黙

藤野監督は1992年から、家族の様子をウォークマンで録音し始めました。当初は記録を残すためでしたが、将来的に精神科医に診てもらう際の証拠になると考え、記録を続けました。その後、映画学校で映像制作を学び、2001年からはカメラで撮影を開始。姉の発症から18年が経過していました。

両親は姉の状況について、藤野監督にはほとんど何も語りませんでした。姉が失踪し、捜索願が出されたことさえ、後になってから知ることになります。姉は1人でニューヨークへ渡航していたのです。この事実を知ったのは、半年から1年後のことでした。実家でニューヨーク領事館の名刺を見つけ、両親を問い詰めた結果、ようやく真相が明らかになったのです。他にも、姉がアメリカの詐欺グループにお金を送っていたという事実も、藤野監督が根気強く両親に尋ねることで、少しずつ明らかになっていきました。

カメラに映し出された現実と葛藤

帰省のたびにカメラを回し、両親との会話や姉の日常を記録していった藤野監督。映像には、統合失調症の患者を抱える家族の葛藤が生々しく映し出されています。精神医療専門家の山田先生(仮名)は、「この映画は、家族が精神疾患にどう向き合うべきかを問いかける重要な作品です。特に、医師である両親が娘の病気を認めようとしない姿は、医療従事者として深く考えさせられるものがあります」と語っています。

若かりし頃の姉若かりし頃の姉

映画『どうすればよかったか?』が投げかける問い

映画『どうすればよかったか?』は、統合失調症という病を通して、家族とは何か、そしてどう向き合うべきなのかを問いかける作品です。藤野監督の長年の記録は、私たちに多くの示唆を与えてくれます。家族の葛藤、そして病気に対する理解の難しさ。この映画は、私たちが目を背けてはいけない現実を突きつけているのです。