戒厳令下の国会:市民の勇気と民主主義の守護

韓国で非常戒厳令が発令された緊迫の夜、国会では何が起きていたのか。大統領による戒厳令発令に対し、国会議員と市民はどのように立ち向かったのか、その一部始終を詳しくお伝えします。

戒厳軍の国会侵入と議員・職員の抵抗

2024年12月3日夜、尹錫悦大統領による非常戒厳令発令を受け、武装した戒厳軍約280人が国会への侵入を試みました。ヘリコプターで乗り込んだ部隊に加え、塀を乗り越えて侵入を試みる兵士も。与野党議員や職員は緊迫した状況の中、国会の防衛に奔走しました。

国会内部での攻防

戒厳軍は国会本庁への侵入を試み、国民の力の政策委議長室の窓を破壊して侵入。室内にあった窓ガラスや植木鉢は粉々に砕け散りました。民主党職員は「武装した軍人が党代表室にも侵入しようとした」と当時の緊迫した状況を語っています。野党議員の補佐陣は、ソファーやテーブルでバリケードを築き、戒厳軍の侵入を阻止しようと必死の抵抗を行いました。一部の国民の力職員も消火器を散布するなど、与野党を超えて国会の防衛に協力しました。

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国会事務処は不祥事を懸念し、庁内の照明を点灯するよう指示。深夜にもかかわらず、本会議場には可決に必要な定足数を上回る議員が集まり、非常戒厳解除要求決議案を全会一致で可決しました。しかし、大統領による戒厳解除宣言までは緊張が続く状況でした。

国会外部での市民の抵抗

国会外部でも、市民と軍・警察の衝突が繰り広げられました。警察は国会の敷地内への立ち入りを阻止しましたが、議員や職員、報道陣は塀を乗り越えて国会へ。民主党の李在明代表や朴洪根院内代表を含む多数の議員も塀を乗り越えて国会入りしました。国民の力の安哲秀議員も党本部からの指示を無視し、塀を乗り越えて国会へ向かったと証言しています。

市民による戒厳軍車両の阻止

5000人以上の市民が国会前に集結し、「尹錫悦政権退陣」「尹錫悦拘束」のスローガンを叫びながら、戒厳軍車両の侵入を身体を張って阻止しました。李在明代表は「市民の活躍が国会を守った」と称賛。市民の勇気ある行動が民主主義の守護に大きく貢献したと言えるでしょう。憲法学者である金道勲教授(仮名)は「市民による非暴力的な抵抗は、民主主義社会における市民の権利と義務を改めて示すものだ」と指摘しています。

戒厳令解除と今後の展望

大統領は国会の解除要求を受け入れ、戒厳令は解除されました。国会事務総長は戒厳軍の国会侵入の様子を捉えた防犯カメラ映像を公開し、違法行為に対する法的責任追及の姿勢を示しました。国会職員の負傷についても調査が進められています。また、国会警備隊による議員や職員の立ち入り阻止についても、国会行政安全委員会で厳しく追及される見通しです。

今回の戒厳令発令は、韓国社会に大きな衝撃を与えました。戒厳令下における国会議員、職員、そして市民の行動は、民主主義の尊さとその脆弱さを改めて浮き彫りにしました。今後の政治状況、そして市民社会の動向に注目が集まっています。