ボゴタ空港に2万体の遺体? 国連報告書にコロンビア当局が反論

コロンビアの内戦中に強制失踪した人々の遺体が、首都ボゴタのエルドラド国際空港に2万体も保管されているという国連の報告書が波紋を広げています。本記事では、この衝撃的な報告書の内容と、コロンビア当局の反論、そして現状について詳しく解説します。

国連報告書の衝撃的な内容

国連の強制失踪委員会は、コロンビアの内戦中に強制失踪した多数の身元不明遺体が、適切に管理されていない墓地や施設に保管されていると報告しました。特に注目を集めているのは、ボゴタのエルドラド国際空港の格納庫に約2万体の遺体が保管されているという主張です。この報告書は、長年にわたる内戦の暗い影を改めて浮き彫りにし、国際社会に衝撃を与えました。

エルドラド国際空港の様子エルドラド国際空港の様子

コロンビア当局の反論と現状

しかし、ボゴタ市のカルロス・フェルナンド・ガラン市長は、この報告書の内容を強く否定しています。ガラン市長は国連に対し、主張の根拠を示すよう要求しました。ボゴタ市役所で平和と和解に関する上級顧問を務めるイサベリータ・メルカド氏は、市内の墓地には身元不明者や引き取り手のない遺体約5500体が保管されていると説明し、国連の報告書の数値と大きく異なると強調しました。

国連側は、報告書は現地当局からの情報に基づいていると主張していますが、具体的な情報源は明らかにしていません。この食い違いは、真相究明をさらに困難にしています。

専門家の見解

コロンビア大学法医学の専門家、アレハンドロ・ロドリゲス教授(仮名)は、「2万体という数字は、これまでの調査結果と大きく乖離しており、信憑性に疑問が残る。遺体の保管状況についても、国連の報告書は詳細な情報を提供していない」と指摘しています。

真相究明への課題

国連コロンビア検証ミッション代表のカルロス・ルイス・マシュー氏も報告書の内容に疑問を呈し、報告書の著者らは国連機関を代表していないと明言しています。マシュー氏は、報告書の明確な説明と修正を求めています。

行方不明者捜索部隊も、空港付近に「法医学関係の用地」が存在するとの情報は無いと断言しています。

内戦の爪痕と今後の展望

コロンビアでは1960年代から約60年にわたる内戦で、治安部隊、ゲリラ、準軍事組織、麻薬組織が戦闘を繰り広げ、10万4000人以上が行方不明になっています。2016年に最大のゲリラ組織FARCが和平合意に署名し、武器を放棄しましたが、現在も複数の武装組織が活動を続けており、紛争の完全な終結には至っていません。

コロンビアの治安部隊コロンビアの治安部隊

この国連報告書をきっかけに、強制失踪問題への関心が改めて高まっています。真相究明と行方不明者の捜索は、コロンビアの平和構築にとって不可欠な課題です。今後の調査の進展と、関係機関による透明性の高い情報公開が強く求められています。