韓国で尹錫悦大統領の弾劾を求める集会が続く中、ネット上では真偽不明の情報が拡散し、混乱を招いています。本記事では、戒厳令下におけるフェイクニュースの実態と、その影響について詳しく解説します。
ミルクティーパックのロウソクから始まった国籍論争
今月7日、ソウル汝矣島の国会前で開催された弾劾集会で、ある女性が台湾のミルクティーパックで作ったロウソクがテレビに映し出されました。すると、一部のネットユーザーが「中国人が弾劾集会に動員された証拠」だと主張し、SNSで拡散。しかし、女性はゼロウェイストを実践する韓国人で、台湾旅行で購入したミルクティーパックをリサイクルしただけでした。
台湾ミルクティーのロウソク
この女性が勤務するゼロウェイストショップ「アルメン商店」は、デマの拡散を受け、誤解を解くために積極的に説明を行いました。しかし、デマは収束せず、別のデマを生み出す結果となってしまいました。例えば、極右ユーチューバーが「中国語のプラカードが掲げられている」と主張しましたが、実際は日本語のプラカードでした。アルメン商店の代表は、「身分証の提示を求めるメッセージが殺到している」と語り、偽情報の影響力の大きさを懸念しています。
芸能界にも飛び火するデマの嵐
政治的な混乱の中で、偽情報に基づく思想検証は芸能界にも波及しています。人気バンドDAY6のメンバー、ドウンが軍服のズボンを履いてドラムの練習動画をSNSに投稿したところ、「戒厳軍支持の意思表示だ」というデマが広がり、炎上しました。一部のファンはドウンの脱退を要求する声明を発表する事態に発展。所属事務所JYPエンターテインメントは、デマ拡散や誹謗中傷への法的措置を示唆しました。
過去の事例に見るフェイクニュースの蔓延
このような政治対立を利用したフェイクニュースは、今回が初めてではありません。2022年には「尹錫悦退陣中高生ロウソク集会」のポスターが偽造され、「ロウソク集会に参加すると奉仕活動の時間が認められる」という虚偽の内容が拡散されました。また、2017年の朴槿恵大統領弾劾デモ時には、編集されたCNNニュース映像が拡散され、「北朝鮮がロウソクデモを利用している」というデマが流布しました。
専門家の見解:政治的分裂と偽情報の相関関係
専門家は、政治的分裂が深まるほど偽情報が拡散しやすくなると警鐘を鳴らしています。仁川大学のイ・ジュンハン教授は、「偽情報と商業的利益が結びついたエコシステムが既に存在する」と指摘。政治的関心が高まる時期に、組織的に情報を加工・編集し、拡散する動きがあると分析しています。そして、偽情報への対策は、市民一人ひとりの情報リテラシーの向上にかかっていると強調しています。
まとめ:デマに惑わされないために
韓国の戒厳令下では、政治的な対立を背景に、様々なデマが拡散しています。これらのデマは、個人だけでなく社会全体に悪影響を及ぼす可能性があります。デマに惑わされないためには、情報の出所を確認し、複数の情報源と照らし合わせるなど、批判的な思考を持つことが重要です。