韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「非常戒厳」宣言を巡り、内乱罪の容疑で捜査を受けている。現職大統領が内乱容疑で捜査されるのは韓国史上初であり、逮捕されれば前例のない事態となる。首相による職務代行の可能性や、憲法における「事故」の解釈など、今後の展開に注目が集まっている。
内乱罪捜査の現状:三機関による迅速な捜査
尹大統領に対する内乱罪の捜査は、検察、警察、そして政府高官らの不正を捜査する高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)の三機関によって進められている。内乱罪は、在職中の大統領が訴追を免れる「不訴追特権」の例外となる重大な犯罪だ。公捜庁トップは11日の国会審議で、状況が整えば緊急逮捕もしくは令状による逮捕を試みると明言し、捜査への強い意思を示した。
韓国の尹錫悦大統領
憲法における「事故」の解釈と職務代行の可能性
憲法71条は、大統領が「欠位」または「事故」によって職務を遂行できない場合、首相、閣僚の順に職務を代行できると規定している。西江大学校法科大学院の林智奉(イム・ジボン)教授(仮名)によると、「欠位」は大統領の死亡や弾劾罷免など、復帰不可能な場合を指す。一方、逮捕によって職務遂行が不可能となる場合は「事故」と解釈される見通しだ。
しかし、「事故」に該当するかの判断をどの機関が行うかは憲法で明確に定められていない。林教授は、まずは大統領自身が判断することになると指摘。大統領が拘束されても職務は遂行可能だと主張すれば、獄中での大統領職遂行も理論上は可能となる。
緊急逮捕の可能性と手続き
捜査機関が容疑者を拘束するには、原則として裁判所から逮捕状の発付を受ける必要がある。しかし、内乱罪のように緊急性が高い場合は、令状なしの緊急逮捕が認められる。ただし、緊急逮捕の場合でも48時間以内に裁判所へ逮捕状を請求しなければならない。
前例のない事態:韓国政界の今後
尹大統領の捜査は、韓国政界にとって前例のない事態であり、今後の展開は予断を許さない。大統領の逮捕、首相による職務代行、そして憲法解釈を巡る議論など、多くの課題が山積している。今後の動向次第では、韓国政治の大きな転換点となる可能性もある。
韓国情勢に精通する専門家(仮名)は、「今回の事態は韓国憲政史上における重大な試練となるだろう。法の支配に基づき、公正かつ透明な捜査が行われることが重要だ」と述べている。